はだかの王子さま

「だから、教えて?
 わたしの両親がどんなヒトだったのか。
 どうして、星羅が殺さなくちゃいけなかったのか」


 わたしだって、星羅のこと嫌いになんて、なりたくないよ……!


 そんな、必死の声に。

 星羅はうつむいて、さらり、と月光色の髪の先をわたしの手の甲に落とした。

「真実……か。
 僕は、真衣が、前王の娘だなんて知らなかった。
 見慣れた姿の下にこんな姿を隠しているのも知らなかったけどね」

 星羅は嘲(わら)った。。

「真衣の正体は……真実は、僕にとっての不幸だった。
 ……僕にも話せることが少しぐらいは、あるけれど。
 それは、真衣にとって、不幸かもしれない。
 それでも、聞きたい?」

 至極真面目で、静かな星羅の質問に、わたしは、うん、と頷いた。

「だって、こんな大事なこと!
 絶対、中途半端じゃ、終われない!」

「そうか」

 わたしの決意に、星羅もまた頷くと、ゆっくりと話し始めた。

「昔、僕は『王子』のほかに、別の顔を持っていたんだ。
 もちろん『コスチュームデザイナー』じゃない。
 自分たちの血族の行く手を自ら排除する王族の端くれ。
 こんなヤツのことを、ビッグワールドでは、美辞麗句を並べた格好のいい名前がついているけれど……
 こちら側の言葉に直せばただの『暗殺者』だ」

「……暗殺者!」

 恐ろしい職業の告白に、わたしは、震えかけた自分の手を握る。

 ……いやいや。

 まだ、これは予測のつく範囲の話なんだけど。

 名前しか呼べないわたしに頷いて、星羅は話を続けた。

「……あれは、十年前の夜だった。
 このときは、まだ、前王がビッグワールドを統治していたものの、国民は前王に不信感を抱いてた。
 原因は、色々あったけれど。
 最下層のゴブリンたちを中心とした盗賊団が、ビッグワールドの広範囲を荒らし、それを捕まえられないことが、決定的にマズかった」

 ……え?

 ゴブリン!?

「それって……ウチでお手伝いしてくれてる、ゴブリンたちの親ってこと?」

 さっき、王さまから聞きかじった情報が気になれば。

 星羅は『そうだ』と頷いた。
< 329 / 440 >

この作品をシェア

pagetop