はだかの王子さま
「その頃。
 僕と腹違いの兄は、身分が『王』に近しいと理由で、前王に疎まれ。
 いつ、暗殺者がやって来てもおかしく無い状態だった。
 だから兄は、前王に殺される前に。
 このゴブリン騒ぎに乗じて、自分が王になるべく画策していたんだ。
 だけど……その矢先」

 言って、星羅はため息をついた。

 どうやら、ビッグワールドの地方都市で、盗賊団のリーダーが捕まっちゃったらしい。

 それは、まだ、上層部用の速報で、一般に公にはならなかったけれども。

 盗賊ゴブリン退治が出来ないことにより、前王を失墜させるつもりの星羅のお兄さんにとっては、厄介なことだった。

「……だから、兄は、まだ国民が盗賊ゴブリンが捕まったことを知る前に……
 前王の名誉が回復する前に、前王を暗殺し。
 そして、ゴブリン逮捕の名誉を自分のものにしようと、僕を暗殺者に仕立てたんだ」

「暗殺者、なんて怖いこと!
 どうしても、断れなかったの?」

 戦ったり。

 ましてや、命のやり取りなんて、わたしには知らない世界だ。

 素直に聞いた質問に、星羅は、う……ん、としぶしぶ頷いた。

「最初に、暗殺者を送りつけて来たのは……前王で。
 もう、何人も僕つきの侍従……って、メイドの男性版みたいなやつだけど……が、僕の代わりに死んでしまってたからね。
 これ以上放っておいて、僕自身と、僕に仕える者の中から犠牲を出すわけには、行かなかったんだ」

「……」

 それは、わたしの『本当のお父さん』が『本気で星羅の命を狙ってた』ってこと。

 本当は、敵同士なんだって、わたしは凍りつきそうになった。

 それでもなお。

 星羅の話は、続く。

「……十年前のあの夜。
 僕は、腹違いの兄に、前王殺害の計画を持ちかけられても、別に抵抗はしなかった。
 ただ『来るときが来た』と思っただけで、なんの感慨もなかった。
 だから、そのまま前王の宮殿に忍び込み。
 ……そして。
 前王夫妻の息の音が止まってるのを確認して、火を放ったんだ」
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