はだかの王子さま

 ……!

 星羅の口から『真実』を聞いて、わたしは、目の前が真っ暗になった。

「それじゃ……星羅は、本当にわたしの両親を……?」

 殺してしまったのだろうか?

 真実が知りたくて。

 震える心を励まして、わたしは星羅の瞳を見つめた。

 すると。

 その瞳が、一瞬迷うように、ゆれてから、伏せられたのを見た。

 それを見て、わたしは少しだけホッとする。

 こんなときの星羅は、大抵まだ、何か隠してることを知ってたから。

 だから。

 ちゃんと聞けば、返ってくる、と思ってた。

『違うよ。
 僕は、やってない』

 って!

 だからって、星羅じゃなかったら本当の犯人が『誰』かって、判るわけはなかったけれども……

 わたしの耳からは、違う言葉が、聞こえて来た。

「そうだよ。
 僕が、殺したんだ」

「……ウソ。
 わたし、信じない」

「真衣」

 僕が前王夫妻を殺害して、火を放った。

 そして、その罪により。

 半年前まで十年間獣の姿でいることを強いられ、人間にはなれなかったんだ。

 そのことについては、みんなが知っている『事実』だよねって。

 まるで、念を押すように星羅は言った。

「ビッグワールドには、暗殺者があふれて、殺さなければ、自分が死ぬ時代だ。
『仕方なかったんだ』なんて、簡単な言葉で終わらせるつもりはないけれと。
 一番の問題は、僕が手にかけてしまったヒトビトが真衣の両親だったってことだ」

 全く知らなかったとはいえ。

 真衣に対する罪として、これ以上の罪は無い。

 星羅は確かにそう言った。

「……愛しい、真衣。
 僕は、君のために生きて出来る償いは、何でもするし。
 それでも足り無いなら、僕の命をあげる」

 そう言って、これで僕を刺せば良いって。

 星羅は、わたしに短剣をくれたけれど。

 そんなの、もちろん使えずに。

 刃を鞘ごと抱きしめてみれば、涙が出て来た。
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