はだかの王子さま

 ……知ってる?

 ビッグワールドのことは、わかんないけれど、こっちの世界では、女の子は、十六才で結婚できるんだよ。

 そう、頑張って言ったわたしに、星羅は、そっと微笑んだ。

「僕は『王子』だけど『暗殺者』だから、ね?
 特に統治する領土も無く、財産があるわけでもない。
 僕を選んでも、真衣に贅沢な暮らしは、させてあげられないかもしれないよ?」

「贅沢な暮らしなんて!
 そんなの、星羅が居なければ、意味無いじゃない!」

 わたしの幸せは、お金じゃ買えないし!

 そんな答えに、星羅の微笑が優しくなった。

「……真衣は、絶対現王には、渡せないね」

「わたしだって、本物の星羅以外、要らないもん」

 星羅は、うん、とひとつ頷いて、改めてわたしを抱きしめた。

「『王』の力は……権力はとても、大きいよ。
 ビッグワールドだけじゃなく。
 この世界にも、協力者が居るんだ。
 その手から、真衣を守る、というのなら……思い切った方法を取らなくちゃ、ダメだ」



 ……例えば、王の暗殺、とか。



 そう、星羅はささやいた。

「僕は、第一王位継承者だから、現王を殺して僕自身が王になり変わることが、できる」


 ……!


「ダメよ!!」

 もう、二度と星羅を暗殺者になんて、させない!

 そんな、わたしの叫びに、星羅は、目を細めた。

「……じゃなかったら、王に、真衣を諦めさせることが出来るといいね」

「……それも、別の意味で無理みたい」

 捕まえるために、わたしが怪我をしても。

 ハンドを殺しても良いって言ったぐらいだもん。

「あの様子なら、ちょっとやそっとじゃ諦めない」

「……そうだね。
 でも、真衣が、完全に僕のものだって判れば、さすがの王だって手を出さないと思うよ」


 わたしが、星羅のモノ!


 い、いや、嬉しいけれど!


 恥ずかしい……


 だって、どうすれば『星羅のもの』になれるかって言えば、一つだけ……だよね?


 ぼんっと、音を立ててあがってゆく体温に比例して。

 きっと赤くなっているわたしの顔色を判っているかどうか。

 星羅は、言葉を続けた。

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