はだかの王子さま
「でも!」

 なんだか、星羅に申し訳なくて。

 ベッドの上でがばっと起き上がったわたしに、星羅が言った。

「……それに、今、ここで何かしたら、ゴブリン君たち見てるし」

「えっ……!」

 すっかり忘れてた、二匹の存在に、改めて、部屋を見渡せば……いた。

 部屋の隅で、こちら側にくるりと背を向けた小さな影、二つ。

 二匹そろって、肩を震わせているあたり、とても困ってる……みたい。

 と……とりあえず。

 星羅がやめてくれたので、何か言った言葉の数々はともかく、変なことは……キスひとつ……してないから……セーフ、だよね?

 お願い、そうだと言って……!

 だなんて、思っている矢先だった。


 ばったん!!


 という、乱暴な音と。

『我がヴェリネルラは無事か!』

 なんて、声がして、振り返れば。

 ゲストルームの扉を、王さまが蹴り開けて入って来るところだった。

 どうやら、長い話をいくつもしたから、思いのほか時間が過ぎてたみたいだ。

 わたしたちが、二人きりで居ることに、心配になった王さまが、とうとう様子を見に来たらしい。

 もし……もしも。

 あれから、星羅が始めてしまえば、きっと、二人で服を脱いでいる最中だったはずだ。

 そんな場面を見られたらわたし、絶対、恥ずかしくて死んじゃう。

 けれども、現実は、二人特に服装に乱れはなく。

 ただ、見つめ合ってるだけだったから。

 いきなり入ってきた王さまが、ただ不機嫌そうに、鼻を鳴らして、聞いて来ただけだった。

『それで、我が腹違いの弟よ。
 仕立て屋の真似事は、順調だろうな??』

 ……!

 王さまは、星羅に、ウェディングドレスの採寸は終わったか? って聞いてるんだ……!

 もちろん、そんなの終わってるワケがない。

 だって、採寸の用意は、テーブルに並んでいるものの。

 一度も物差しをわたしに当てずに、ずっと話をしてたんだもん!

 
< 347 / 440 >

この作品をシェア

pagetop