はだかの王子さま

 だから今回も、続けて何かを仕掛けてくるんじゃないかと、身を震わせれば。

 王さまは、深々とため息をついた。

『……無体なことはせぬといっておるのに……
 一体、いつになったら、そなたは我に心を開くのか』

『……』

『例えば……ゼギアスフェルを亡き者にすれば。
 その美しい瞳に、我を写してくれるのか?』

『!!!』

 なんて、ことを言うのよっっ!!

 驚いて、目を見張るわたしに、王さまは、ひらひらと手を振った。

『今、この状態でさえ、憔悴(しょうすい)しているそなただ。
 不用意に、ゼギアスフェルを殺して、後を追われたら、かなわぬ。
 ま、こちらの世界より、ビッグワールドの方が食い物も美味い。
 こちら側のグラウェが濃すぎるのも、要因かも知れぬ。
 早急にビッグワールドに帰り、空気の良いところで養生すれば、そなたも回復するだろうよ。
 夜中だろうとかまわない。
 今年は、開門と同時にビッグワールドに帰る』

 その言葉に、ソドニが、青ざめた。

『王よ!
 今までの慣習では、扉が開いて日の出とともに、王がこちらにお渡りになり。
 一日フェアリーランドの視察をして、閉門寸前にお帰りになるはずでは?
 実質、ご移動が一日早くなりますが……』

 きっと、それはごく当たり前の意見だったのだろうけど。

 わたしには、甘く受け答えしている王さまは、ソドニをぎりっと睨む。

『うるさい!
 今年は早々とこちらに渡り、視察など、とうに終わったわ!
 それより、一刻もはやく、ヴェリネルラを我がビッグワールドに連れ帰るのだ!
 このドレスを見よ!
 ゼギアスフェルだけではない。
 シャドゥ家……ひいては、フルメタル家がこぞって、ヴェリネルラを狙っているではないか!
 こんなところで、おちおちと休んでいられるか!』

 王さまは叫び、足音高く、この部屋を出て行ったんだ。








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