はだかの王子さま
 結果。

 抱きしめる王さまの腕の中に、すっぽり包み込まれてしまったわたしの耳元で、王さまはささやいた。

『無駄な抵抗は、可愛いのう?
 しかし、あまりおイタが過ぎれば、我もそなたにお仕置きをせねばなるまいよ?』

 言って、王さまは、ぐっと声を落とし、迫力のある声を出した。

『そなたの家のコブリン二十匹。
 一匹づつ、ワルプルギスの焚き火の中に、放り込まれるのと。
 これから行われる、ビッグワールドへ凱旋パレードの屋根なし馬車の上。
 大勢に見られながら初夜を迎えるのと、どちらが良い?』


 ちょっ! なにそれ!!


 そんなモノ、選べるわけ無いじゃない!!


 怖いのと、泣きたいのをこらえて、ぎゅっと王さまを睨めば。


 彼は、ふふん、と鼻で笑った。


『おお、恐怖に打ち震えると思ったら、怒ったか。
 たまにはそんな顔も悪くない……が。
 せぬよ。
 愛しいそなたが、本当に悲しむことはせぬ』

『もう、いい加減にして!!』



 王さまは、絶対、わたしをからかって遊んでる……!



 涙目で睨むわたしに、王さまはカラカラと笑う。

 長い下り階段が危ないと、心配する取り巻きたちを蹴散らして、外に出れば。

 真っ白で、金の装飾をした、屋根の無い豪華なパレード用馬車がわたしたちを出迎えた。

 まだ、部屋の中の明かりで目の慣れない、真夜中の闇に、ぼう、とそれだけ浮かび上がって見える。

 左右に、大きく繊細な車輪が目立つ、可愛い馬車を引くのは。

 頭に一本角をつけた、信じられないほどキレイな白い馬!

 びっくりしているわたしに、王さまはこれは『一角獣』だと言った。

 一角獣って、ユニコーンっていったっけ?

 そんな珍しい生き物を四頭も使って馬車を引っ張る、おとぎ話の乗り物だ。

 ユニコーンたちは、わたしたちが、馬車に乗り込む時に、口々に『おめでとうございます』って頭を下げる。

 どうやら、このユニコーンたちも、タネ仕掛けなし。

 本物の、ビッグワールドのヒトビトらしかった。

 王さまは、その挨拶に『うむ』なんて、上機嫌に頷くと。

 横に座らせたわたしを、ぐいっと抱き寄せ、手を上げた。

『よし、出発!』



 おぉぉおぉぉう!!


 王さまの合図で、変に抑揚のついた雄叫びと共に。

 真夜中の暗闇の中から、何かが次々と立ち上がる。
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