はだかの王子さま
『どうだ? 気に入ったか?
 美しいだろう? すばらしいだろう?
 これらの民も、品物の数々もすべて我の持ち物だ。
 そして望むなら、全部そなたに譲ってもいいのだぞ?』

『いりません』

『ふむ。我がヴェリネルラは、欲がないのう』

 王さまが、やれやれと肩をすくめ。

 ようやく、わたしたちの馬車が動き出すと、真っ暗闇の沿道からも、歓声があがった。

 こっち側の全世界中に散らばった『ヒトにあらざるもの』全てが詰めかてるんだ。

 前の年に比べて出発時間がとても早かったために、間に合わなかったらしい。

 遅れてきたヒトビトも、次々に列に入り、パレードは更に長くなってゆく。

 やがて、このへんてこりんな。

 けれども、本物の異形の生き物たちのパレードは、一瞬もためらい無く。

 フェアリーランドを抜けて、人工島、キングダム・リゾートの周遊道路一杯に歩き出した。

 ちょっと!

 こんな大胆なこと、バレたらどうするのよ!

 なんて。

 どきどきしたのは、わたしだけ……みたいだった。

 パレードがしばらく移動すると。

 今度は、キングダム・リゾートに立ち並ぶ、あちこちのホテルから歓声が上がった。

 このパレードを見ている、ホテルに泊まった一般のお客さんだ。

 時間は、真夜中。

 普通なら『安眠妨害!』って言われても、全くおかしくないのに!

 パレードがあまりに不思議で、豪華だったからか。

 ホテルの防音がよく効いていて、眠いヒトは、窓を閉めれば何も聞こえなくて済んだのか。

 窓から手を振るヒトビトは、みんな笑顔だ。

 そもそも、人工島に一般車両は乗り入れ禁止で。島を巡るバスと電車が止まり、お土産やが閉まれば。

 何不自由なく設備が整ったキングダム・リゾートのホテルから、一般客が真夜中に外に出る理由がない。

 だから『ホテルからの外出禁止』が徹底されて一般人が迷いこむこともないのかな?

 いつもはお休みのフェアリーランドが、明日に限って『無料開放する』とかで、ホテルにおしかけた沢山のお客が、きっと。

 この様子をフェアリーランドの3Dプラス1の映像か。

 もしくは『キングダム・リゾート』の特別イベントだと思って、声援を送っているんだ。
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