はだかの王子さま
 そして、その王さまが行く先に、見慣れたヒトビトを見つけて、わたしは思わず声を上げた。

「星羅、星羅……っ!
 美有希!!」

 そう。

 地面から競りあがった扉の前には、星羅がいた。

 白地に金糸の涼やかな服とブーツ、王さまより短いマントを羽織った『王子様』のカッコしている。

 そして、星羅の傍らには、美有希。

 黒地に銀糸を縫いつけた、なんとなくシックな雰囲気のあるドレスは『門番』の正装なのかな?

 手には、銀に輝く鍵の束を持っていた。

 ……と。

 そこまでは良かったんだけど……。

 星羅と美有希。

 二人を良く見て、ぎよっとした。

『鎖(くさり)』がついていたんだもん!

 ……そういう、ファッション……っていうんじゃないよね?

 それぞれの正装の見栄えを損なうことのない。

 キレイな金属の戒めは、一瞬何かの飾りのように見えたけれど。

 テレビで見る手錠よりはすこし長いだけましな、手首の鎖は。

 チョーカーのような金銀の首輪にもつながり、カラダの動きをかなり制限している。

 星羅に至っては、腰に細身の剣まで吊っているのに、丁度鎖が邪魔して、簡単には抜けそうもない。

 これは……やっぱりわたしを逃がさないため……?

 王さまは、抜け目ない。

 フェアリーランドの扉を開けるには、星羅と門番と王さまがいる。

 そのうち、星羅も、新しく門番になった美有希も、わたしを助けようとしてくれているから、きっとこんなことになっちゃったんだ。

 王さまは、鎖でつながれた星羅に、つかつかと近づくと、片手で首もとの鎖を強く引き、顔を寄せた。

『いい格好だな、ゼギアスフェル。
 鎖に獣の力を戒められ、首輪に喉を封じられ。
 魔法の言葉一つ吐けぬそなたの、なんともか弱きことよ。
 ヴェリネルラは、我のものだ。
 そなたは、ここで、毎年血を流し。
 扉を開くだけの、贄(にえ)としてのみ、生きればいい……!』

 王さまは、そう鋭く叫ぶと、もう片方の手に持っていた棒を星羅に向かって振りかぶる。

 その先端には、いつの間にか、鋭い刃がついていて、星羅の左手の甲を狙っていた。

 次に、星羅が何をされるのか。

 判ったわたしは、叫ぶしかできなかった。
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