はだかの王子さま
 
 こっそり、毎日きちんとしているなんて。

 なおさら大変なことに違いない。

 日頃の感謝も込めて『大好き』って言ったら端正な父さんの顔が、にへらっと笑み崩れた。

「やっぱり。
 真衣は、俺のヴェリネルラだよな」



 ヴェリネルラ!



 普段は、聞き慣れない。

 けれども、昨日。

 星羅が確かに言っていた花の名前に、わたしは、お父さんを見た。

「ヴェリネルラって、ハート型の実が成る花で。
 ワインや、ジャムにすると美味しい花、だっけ?」

「おお。
 日本に無い花なのに良く知ってるじゃないか」

 わたしの言葉に、お父さんは、感心したように、頷いた。

「だが、ヴェリネルラはそこらに生えている植物じゃない上。
 主に、花だけを愛でて鑑賞するもので、めったにその果実は、食べられない。
 美味いけれど貴重な花だからな……
 実(み)は身分が、ばかすか高いヤツらしか、食べられないし。
 ましてや、ワインだのジャムだの、なんて超贅沢品。
 王と、その継承者くらいしか無理だろうな」

「へ……へぇ、そうなんだ……」

 確かに星羅も、貴重な花だとは言ってだけど、そんなすごい花だったなんて。
 
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