はだかの王子さま
『もし、そなたが本物の覇王の剣だと言うのなら。
 二つに分かたれた、全世界に君臨すべき覇王は、もうすぐ、目覚める兆しにあるという。
 覇王が復活するのなら、そなたは覇王にのみ付き従う一振りの剣となりヴェリネルラを愛する暇もなかろうよ』

 王さまは、星羅を嘲笑った。

『魔剣が、覇王について吹聴してまわるなら。
 大方、覇王候補はフルメタル・ファングなのだろう?
 友が覇王なら、その剣の生活も悪くはなかろう?
 それとも、今までの格下に使われて屈辱か?
 どちらにせよ、ヴェリネルラは我が責任を持って、面倒をみてやるゆえに。
 そなたは心おきなく、剣としての運命(さだめ)を受け入れよ』

『ふざけるな!
 あなたに真衣は、渡さない!!』

 最初に我慢ができなくなったのは、星羅の方だった。

 構えていた手が剣の柄(つか)を握ったかと思うと、刃が、銀の軌道を描いて一閃する。


 早い!


 けれども、しかし。

 王さまは、抱きしめていたわたしを斜め後ろに突き飛ばし。

 星羅の剣撃を鞘(さや)のついたままの剣で、ようやく受け止めた。



 ガキンっ!!



 抜く手も見えない星羅の剣は、王の剣で止められる。

 ……と思ったのは、一瞬だった。

 剣は確かに、一瞬は止まった。

 けれど、星羅がぐぃと、手首を返して、力を込めたとたん。

 王さまの剣は、鞘(さや)ごと真っ二つに、斬って捨てられたんだ。

 そして、一仕事終えた星羅の剣は、パチンと音を立てて、すぐに自分の鞘に収まる。

 狭い馬車の中、無理やり一歩真後ろに飛び下がった王さまを追って、星羅は、馬車の中に飛び降りた。

『王よ。
 あなたの腕では、私を止められない』

『ソ……ソドニ!』

 王さまも、星羅の話をその通り、だと思ったのか。

 パレードの先頭に、首を回して、黒竜を呼んだけれど!

 長く伸びたパレードは、先頭とかなり距離がある。

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