はだかの王子さま
 そして、星羅は、ハッとしたように、頭を上げた。

「……そうだね。
 それなのに逆上して、真衣に止めて貰わなかったら王を斬ってしまっていたかもしれないね」

 ありがとう、ってささやき、そのままぎゅっと抱きしめる。

「……王さまを殺さなくても良くて。
 みんなが、なんとか丸く収まる方法ってあるかな……?」

『そんな都合の良いことはない』って言われても仕方がないんだけど……!

 心配するわたしに、星羅は「あるよ」ってささやいた。

「本当は、むしろ。
 そのつもりで、こっち側に乗り込んで来たんだ」

 星羅は、そう言うと、わたしをお姫様抱っこにかかえ直して立ち上がった。

 その、見据える先から、王さまと、ソドニが、どたどたと足音高くやって来るのを確認して、くるりと90°ほど身をひるがえす。

 ……と。

 改めて見えたその先には、星羅の火で燃え上がっている扉があった。

 王さまの騎士団の半分が、火を消そうとやっきになっているけれど、猛烈な炎の勢いは、止まらない。



「……って、これを使うの!?」


 びっくりしているわたしに、星羅は、そうだよって笑う。

 そして、ひゅっと、風を巻き、扉に向かって一直線に駆け出した。

 ところが、わたしたちの後を追う王さまが叫んだ。

「ゼギアスフェルよ!
 そなたの火は強すぎる!
 もう、いつ、崩れ落ちてもおかしくない火の勢いなのに、扉をくぐるつもりか!?
 そんなことをしてみよ!
 そなたはともかく、ヴェリネルラが燃えてしまうではないか!」

「せ……星羅!」

 王さまが、何か言ってる!

 星羅と一緒なら、どんな所だって怖くない。

 けれども、目の前にある、大きな火の塊にひるむ。

 思わず、星羅の胸に顔をうずめれば、星羅は『大丈夫だよ』って受け合った。

「真衣からは、ヴェリネルラの花の香りがする。
 ……ドレスと一緒に贈った下着のキャミソール、ちゃんと着てくれたでしょう?」



 下着!



 いや、今、それどころじゃなかったらけれど!

 恥ずかしくってうつむくわたしに星羅は言った。
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