はだかの王子さま
「真衣の下着に『耐火』の魔法をかけてある。
 弱い小さな魔法だけど、僕と一緒なら、髪の毛一本燃えないし。
 扉の炎は、扉自体を燃やしているわけじゃない……!
 僕と僕が望むもの以外、人も獣も扉からの出入りを禁止する炎の幕だ」

 とりあえず、空気をいじって火にしてるから。

 やろうと思えば永久にだって『扉は、無傷で』燃やし続けることができるんだと星羅は、言った。

 空気をいじってるって!?

 ま、まあ。

 ハンドと逃げた時みたいに、大きな水の塊をいきなり燃やすよりは、簡単なんでしょうけど!

 わたしたちが止まらないのを見て、王さまがまた叫ぶ。

『お前たちだけが、外に出て良いのか!?
 フルメタル・ファングは、こちら側に居るんだぞ!』

「星羅……!」

「大丈夫。フルメタル・ファングにも、耐火の魔法のついたマントを渡してある。
 それに、彼はまだ僕の姿をしてるから、これくらいの炎では、まず燃えない」

 そっか。

 お父さんの方は、王さまと違って、血を使う分、外見だけじゃなく、その能力まで使えるんだったっけ!

 今回のこれは、話し合い済みらしい。

 お父さん……どうしても、覇王の遺体の眠る御堂に用があるって。

 星羅が扉を開けてお父さんに道を作り出し。

 そのとき星羅が、わたしを助けに行くのに何か障害があれば、お父さんがそれを斬る約束だったみたい。

 今まで通りの習慣では、開門直後のパレードに、王が加わることがなかったから、どうなることかと思ったけどね?

 そう星羅は息一つ乱さずにしゃべってるけれど!

 実際は、わたしたちを捕まえようとする、パレードの参加者をよけながら、戦いながら、走ってた。

 あ、今もまた!

 扉の消火作業を止めて、わたしたちの行く手を阻む、騎士のヒトを星羅が蹴り飛ばし、その上を踏んで、扉の前に踊り出る。

「真衣、炎の壁を越えるよ?
 少しの間だけ、息、止められる?」

「うん!」

 星羅に言われて、頬に空気をためた時だった。

『待て!!!!!』

 って絶叫に、振り返れば。

 よっぽど必死で、変身がとけたみたい。

 星羅の姿から、自分の素顔になった王さまが、わたしたちに向かって、手を伸ばし。

 ソドニに止められている姿がチラッと見えた。
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