はだかの王子さま
 向こうの世界でも、王さまが何かしてるのかな?

 こちらの夜が明けるにつれ、暗くなってきた扉の向こうでは、時々、ふっと、火の勢いが弱くなることがある。

 それは、本当に時々だったけれども。

 扉の炎を維持するために、星羅は、地下に閉じこもっているわけにも行かず。

 フェアリーランドで一番背の高い、白薔薇宮殿の北塔のてっぺんから、扉の様子を見ているんだ。

「……やっぱり、僕の部屋の方がゆっくり眠れる?」

 顔色、本当に悪いよって心配してくれる星羅に、わたしはちょっと笑った。

「星羅の部屋は素敵だけど。
 そしたら、星羅と一緒に、居られないでしょう?
 それに……あ」

「どうしたの?」

「今度は、一瞬。
 扉の向こうで輝く星が見えるほど、火力が弱くなった……!」

 一応決着がついたとはいえ。

 開けっ放しの扉の向こうに王さまがいると思うと、悪い意味で、ドキドキする。

 心配するわたしを見て、星羅は窓際から離れ、こちらに来るとベッドに座った。

「大丈夫、僕は強いよ。
 それに真衣が見たの灯りは『星』じゃないし」

「……え?」

 なにそれ!

「じゃあ、扉の向こう。
 上の方に光る明かりは?」

「ビッグワールドに住んでいる人たちが 灯(とも)す、人工の灯(ひ)だ。
 こっち側の地球ってさ。
 重力に引かれ、ボールの上に乗って生活しているみたいなモノでしょう?
 でも、ビッグワールドってね。
 グラウェを閉じ込める世界だから、ボールの内側にいろんなモノが張り付いている世界なんだ。
 太陽と月の兼用になっている天体……っていうか。
 巨大な明かりが、真ん中にあって、ね」

 ビッグワールドに入った時、気がつかなかった? って、星羅に聞かれたけど。

 わたしがビッグワールドに入ったのは、一瞬だったし。

 ばたばたしてて、辺りをしみじみ見ている余裕なんてなかったなぁ……

「やけに、高い山に囲まれてるなぁ、とは思ったけど、さっぱり気がつかなかったよ」

 なんて。

 首をひねるわたしに、星羅は微笑んだ。
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