はだかの王子さま
「ビッグワールドで夜に輝く灯(ひ)は、グラウェの灯(あか)りだから、こっち側の星々よりも、ずっと明るいんだ。
 それに一年間、この炎を維持してろって言うならともかく。
 一日勝負なら、絶対、誰にも負けない自信がある」

「星羅」

「フルメタル・ファングの気が済んで、こっちの世界に戻って来たら。
 二人で予備の扉板をこちら側から設置して、この件は完全終了だよ」

 だから安心してって、星羅は言った。

「……うん」

 それに大人しく頷いて……考え込む。

 このゴールデンウィークの用意で、お父さんに成り代わった賢介と家を出て行って以来。

 わたし、一度も、お父さんとちゃんと会っていない。

 その間に、いろんなことを聞いたし。

 わたし自身もだいぶ変わっちゃったんだ。

「でも、なるべく早く、会いたい……な」

「真衣」

 困ったように、キレイな眉をよせる星羅に、わたしは、ごめんね、と手を振った。

「星羅は、すぐ近くにいるし。
 わたしを連れて行こうっていうひともいなくなったよね。
 心配ごとが無くなったからって、次の心配をつくるなんて、ダメよねぇ」

 残った気がかりは、お父さんのこと。

 深刻な問題も、山済みのまま、どっかに行っちゃうなんて……

 お父さんは、今まで本当に大好きで、頼りになる親だったのに。

「……フルメタル・ファングは、今日中に。
 大扉を閉める時間までには、帰って来るって」

 そう、星羅は言ってくれたけれど。

「……お父さんは、ビッグワールドへ何しに行ったの?」

 そんな簡単な質問に星羅は言葉を濁す。

「……本当に覇王が復活するかどうか確かめるのと。
 もし、本当に復活するのなら。
 せめて、今の時代には復活しないように止めて来るって」

「覇王って!
 世界を滅ぼすって言ってる『あれ』でしょう?
 ビッグワールドで、一瞬見かけた時は、お父さん一人だったよ?
 それでも、なんとかなるもの……なの?」

「……本当は、僕も行ければ、良かったんだけど……
 僕の場合は、下手をすると魔剣0と融合して、余計に覇王の目覚めを促してしまうから、ね」
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