はだかの王子さま
 どうやら星羅は、一刻も早くわたしをこっちの世界に連れ帰り、守る係に割り振られたらしい。

 他に使えそうなハンドはまだ飛べず。

 賢介は美有希のガードに入ったみたい。

 ……でも。

 魔剣0と星羅が融合して『蒼のセイラ』を見た以上。

 星羅が、お父さんと一緒に行動出来ないのは、判る。

 ハンドも回復してないなら、無理だよね?

 だけど、賢介なら……!

 美有希は、フルメタル家の当主でしょう?

 彼女は、他にもたくさんのシャドゥ家のヒトたちを抱えているみたいだし……

 何も賢介が直接美有希に着かなくても、良くない?

 賢介もお父さんを『師匠!』って呼んでなついてるし。

 わたしと一緒にお留守番って言うのはできなかったけれど。

 他は、小器用に色々役にたつ『デキるコ』だったのに。

「……賢介ぐらい、一緒に連れて行けば、良いのに」

 わたしが、ぽつりとつぶやけば。

 星羅は、もう少し近寄って、わたしの髪をすくった。

「きっと……一人で行きたかったんだろうね。
 もし、本当にフルメタル・ファングが『世界を滅ぼす覇王』で『ソレ』に目覚めてしまったら。
 そして、もし。
『覇王の力』って言うヤツが制御できなかったら。
 多分。
 最初の犠牲者は、同行者だろうから」

「……う」

 その昔。

 大陸を二つも切り離し。

 ビッグワールドを作った男。

 大騒ぎで、周りを見る時間がなかったとはいえ。

 まさか、そのビッグワールドが、風船やボールの内側のように、こちら側とは、真逆な世界だなんて、ちっとも気がつかないほど、大きな世界を作ったヒト。

『覇王』

 もし、そんなモノにお父さんがなっちゃったとして、わたし。

 今まで通り、お父さんと暮らせるの?

 星羅だってその時は。

 魔剣0と融合し。

 その偉大な覇王の剣の一部になっちゃうんだ。

『星羅』としての記憶を失って。

 だから、お父さんも……今までのお父さんじゃなくなっちゃうかもしれない。

 ……わたし。

 いっぺんに、二人も『大切なヒト』を失ってしまうかもしれない。



 そんなの、イヤだよ……!

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