はだかの王子さま
 だから。

 星羅の熱い口づけが、いつの間にか、首筋の方に移っていき。

 唇と同じぐらい熱い手が、少しずつわたしの着ている服を乱し。

 星羅が、わたしを次のステージに誘い、連れて行こうとしているのも、全く怖くなかった。

 甘いしびれに、心地よく身を任せ。

 ますます上がってくる熱と比例して、荒くなってゆく呼吸が、ため息が。

 自分のものか、星羅のものか良く判らなくなったとき。

 わたしの『全部』は、とうとう。



 ……星羅のものになったんだ。



「……衣、真衣。大丈夫……?」

 まるで。

 激しい運動をした後みたいな疲れと。

 カラダのあちこちが軋(きし)むような痛みに意識が遠のきかけ。

 わたしは、星羅のはだかの胸に抱きしめられた。

 いつもの、ふわふわした毛皮の獣じゃない。

 細くても、きちっと筋肉のついた人間のカラダだ。

 男のヒトのはだかのくせに、なんだかとっても色っぽい。

 きっと、こういうのが『セクシィ』って言うんだろうな……って。

 ぼんやりと思ってはっと、気づいた。



 ……わたしも、はだかだ。



 わたしたち、二人とも、生まれたままの恰好で。抱きしめあってる……!

 なんて、自分の今の状況に気がつき、慌て。

 それよりも、もっとすごいことを今までしていたんだって思い出して、うぁぁっと頭に血が上った。

「ま、真衣! しっかりして!」

 ここの所、モノが食べられなくて、調子が悪いから、じゃない。

 とんでもない恥ずかしさに、血圧が上がり、鼻血を吹きそうになった。

 くらくらする眩暈(めまい)に、甘い雰囲気は、早々に吹き飛び。

 わたしの様子に、青ざめた星羅が『医師を呼んでくる!』とベッドを飛び出しかけた星羅の手を慌てて掴(つか)んだ。

「わ……わたしは、大丈夫だから……っ!」

「でも!」

「本当に、大丈夫!
 それよりも!
 その格好のまま部屋から出ちゃダメ!
 ヒト、呼んじゃダメ~~!」

「……あ」

 わたしが声をかけて、やっと自分がどんな姿で居るのか、思い出したらしい。

 星羅は、どうしようか?

 なんて、一瞬脱ぎ散らかした服を見……

 結局、服を着る気にならなかったのか。

 いつもの獣の姿になって、わたしの方に戻って来る。

 そして、そのまま、ベッドの上にうつぶせになった。
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