はだかの王子さま
「ビッグワールドの存在が公には秘密だし。
 その姿で今まで通りの『内藤真衣』を名乗るのは、無理だ」

 そ、そうよね。

 どう考えても、もっともな問題に頷けば、星羅は言葉をつづけた。

「もしかしたら、フルメタル・ファングが元の姿に戻すやり方を知っているかもしれない。
 けれど、今の姿の方がヒューマンアウトした『本当の真衣』に見える以上、難しいかもしれないな」

 例えば、王さまのように単純に姿を変えるタイプなら。

 変身するコツを掴むまで、もとにもどれないし。

 お父さんみたいに、血を吸って変身するタイプの場合。

 元になった女の子と出会い、血をもらえれば、一時的に元には戻るけれど。

 永遠に、今までの姿で居ることなんて、出来ない……らしい。

「それに一応、ウチの……ビッグワールドの建築士に連絡を取って、真衣の家は修復済みだけど……
 ご近所さんの目もあるから、すぐには家に帰り辛いよね?
 だから、当分真衣はこの白薔薇宮殿の主『白薔薇姫』を自前でやればいい」

『白薔薇姫』を自前!

 そこだけは、何だか恐ろしいけれど……新しいこの顔とカラダは、我ながら、お人形さんみたいだ。

 とりあえず、納得出来る話に、ぼうっと頷けば。

 星羅は、狼の顔を悪戯っ子みたいにほころばせて、笑った。

「……って言うのは、フルメタル・ファングへの言い訳」

「え?」

「本当は、単に僕が真衣を放したくないだけなんだけど、ね」

 ヒトって、案外、他人の顔を良く見てないものだから。

 真衣がどうしても、今までの生活を望むなら。

 黒髪のウィッグ(かつら)をかぶり。

 カラーコンタクトやメガネをかけて、シャドゥ家の『糸』を上手く使えば、大丈夫なんじゃない? って星羅は、言った。

 それでも、もし良かったら。

 あの、今炎を上げて燃えている扉を仕舞ったら、こんな所にいないで、僕の部屋においで、って星羅はほほ笑んだ。

 そして、気のすむまで、疲れきるまで、何度も何度も愛し合おうって……!

「もう! 星羅のお莫迦!」

 やっぱり恥ずかしさで、かぁっと、頭に血が集まって、のぼせちゃったけど。

 星羅の提案は、そんなに悪くないかも……なんて思うわたしは……変かな?
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