はだかの王子さま
 ワケが判らない状況に、首を傾げれば。

 星羅は、違うよって目をつぶった。

「僕は『百』二十一才。
 真衣とは百と五才差、だ」

「……ウソ」

「こっちの世界と、ビッグワールドが別たれて、一万年経ってるからね。
 綿々脈々と使われ続けたグラウェの影響で、見た目もこちら側とはだいぶ違うし、寿命も五倍長生き、なんだよ。
 子どものときは、こっち側の人たちと同じように成長するけれど、大人になると、成長が止まる。
 そして、その後は、寿命で死ぬ直前まで若いまま、なんだ」

「……じゃあ、星羅は少なくとも、三。四百年はそのまま?」

「……多分ね」

「それ、いきなり魔法が解けて、あっという間にしわしわのおじいちゃんになる……なんてことは……」

「無いよ。
 変な話だけど、僕が狼に……獣の姿になれるのが、ビッグワールドの住人の証でもあるからね。
 こっち側のヒトビトよりずっと長生きなのは、確かだ」

「……じゃあ、わたしは?」

「真衣も、こっち側で育った時間の方が長いけれど。
 金髪の姿になれたってことは本当にビッグワールドの子、だよね?
 フルメタル・ファングは何も言わなかったから、真衣がこっち側の子だったらどうしようかと、思っていたけれど。
 良かった。
 真衣は、もう大人になったから、ここで成長が止まり……あと、四、五百年はそのまま生きることになる」

「……そっか」

 なんだか、信じられないくらい壮大な話、だけど。

 星羅が、こっちで生まれた普通のヒト、だったら。

 生きる時代が違って、出会えなかったんだ。

 わたしも、星羅と同じモノだって言うのなら。

 これから先もずっと、ずっと一緒なんだね。

 百年じゃ済まない、長い、長い時を、星羅と過ごすなら……いいや。

 わたし、本当に、王さまのモノにならなくて、良かった。

「……真衣?」

 黙ったわたしを、星羅の琥珀の瞳が心配そうに見上げてたけれど。

 わたしは、ううん、って首を振った。

「星羅の年、びっくりしたけど、引かないわよ。
 五分の一にしたら二十四才ちょっとだし。
 これからも、ずっと一緒に居れれば、うれしいかも……そのぉ……星羅」

「なぁに、真衣」

「……これからも、よろしくね?」

 わたしが、星羅にぽふっと、抱きつくと。

 星羅は、狼の顔をほころばせ。

 とても嬉しそうに、笑った。













 
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