はだかの王子さま
『ケンソンは、日本人のビトクと聞いたが、そなたも?』

『全く、ぜんぜん違うってばっっ!
 わたしが好きなのは、ゼギアスフェルだけなんです!!』

 わたしの叫びに、王さまは悲しそうに言った。

『女は、一度抱かれると弱い、という。
 例え、嫌いな相手でも、傷ついた心を守るため、恋心に似た感情を抱いてしまうとか……』

 ……だめだ、こりゃ。

 全部自分の良いように解釈して、全然話にならない。

 けれども、わたしの声は、別の所に届いたみたいだった。

 部屋を飾る、絵が、花が、花瓶が。

 その他たくさんの装飾品が。

 ぱ、ぱ、ぱ、と次々にゴブリンの姿に変わり、王さまの前に、立ちふさがった。

 そして、一斉に、睨み、叫んだ。

『ヴェリネルラは、ゼギアスフェルさまのモノなんだからナ!』

『『そうダ、そうダ!』』

『誰も邪魔しちゃいけないんだゾ』

『『そうダ、そうダ!!』』

『ヴェリネルラは、王さまになんテ、似合わないヨ!
 ひとりでビッグワールドに帰っちゃエ!』

『『そうダ、そう……』』

『うるさーーーい!
 醜いゴミども!!
 その口を閉じよ!!』

 早々に、ゴブリンたちの抗議を聞いて居られなくなったらしい。

 王さまは、怒鳴った挙げ句、ゴブリンたちを蹴散らした。

『我が、ヴェリネルラに似合わぬと!?
 我は、ビッグワールドの王なるぞ!!』

 そして、ついでに、ぐぉん、と吼えた。

『しかも。
ゼギアスフェルが、剣にあらず。
 フルメタル・ファングも『覇王』でないとすると真の覇王は、我かも知れぬのに!
 全世界の頂点に君臨する我にこそ、ヴェリネルラは、ふさわしいのだ!!』

 王さまの使える魔法は、何だろう?

 彼の言葉と一緒に吐き出された、透明な何かに。

 ゴブリンたちは、軒並み突き倒されて、ころころと倒れたけれど。

 すぐにみんなぴょんぴょんと立ち上がり、負けずに叫んだ。

『ビッグワールド王なんテ『覇王』じゃないもんネ!
 マスター・ファングが一度だけ言ってタノ、オイラ聞いたもン!』

 ウチでは、何の役をしてたの……かな?

 ウサギみたいな耳のゴブリンが叫び返す。

『本当の『覇王』って、実は………』
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