はだかの王子さま
 そこまで、言った時だった。

 突然、窓の外が騒がしくなったんだ。

 こんな、白薔薇宮殿のてっぺんで、騒いでいるのに。

 ゴブリンと王さまが、思わず揃って黙ったほどの騒ぎだった。

『『何事……!?』』

 ゴブリンも、王さまも窓に駆け寄って、やっぱり揃って凍ったように立ち尽くす。

『な……なにが起こったの?」

 わたしも、ベッドに上半身だけ、ようやく起こして息を飲んだ。

『……大扉から……なんか……出てくる……!』


 そう。

 まるで、扉から白薔薇の宮殿に向かって巨大な手にひっぱられたかのように、抜けてくるのは、巨大な剣……だったんだ。

 まず、ビッグワールドからこっちに、冗談みたいに莫迦でっかい剣の柄(え)の部分が飛び出して来た。

 そして。

 縦横三十メールはある、ビッグワールドに続く火の消えた大扉を剣の鍔(つば)相手の剣を受ける時、剣を持つ手を守る場所)がギリギリくぐり抜け。

 まるで、扉が剣の鞘(さや)みたいに、刃が抜き放たれようとした。

 それは、見る角度により、うっすらと蒼く見える魔剣0の刃。

『反り』の無い直刀で全体の長さが……どれだけあるんだろう?

 扉出現のために封鎖した、宮殿への道に出て来た様子を考えると、二百メートルぐらい……あるような気がする。

 その莫迦でかい剣は、人の集まる広場の反対側から出て来たので、フェアリーランドに来たお客さんに怪我は無く。

 みんな、足をとめ、呆然と見ているだけで済んでいるけれども!

 これ……が。

 一万年前に、地球の大陸を切り離し。

 ビッグワールドを作ったって言う剣!!

 そして。

 今度蘇ったら、世界を滅ぼすって言う覇王の剣。

『世界を滅ぼす覇王の剣(セイラムド・フォン・ゼギアスフェル)!!』

 今まで、呆然と見ていた王さまは、一声叫ぶと、ゲラゲラと笑いだした。

『これぞ、本物の覇王の剣だ!
 見よ!
 覇王たる我を追いかけて、こちらにやって来たのだ!

 我が剣よ!

 この手に来い!!!』


 王さまが、そう叫んだ時だった。

 まるで、王さまの声に応えるかのように、剣が立ち上がった。

 立ち上がって、その大きさが、改めてわかる。
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