はだかの王子さま
 フェアリーランドで一番大きな建物、白薔薇宮殿よりも、はるかに高く。

 東京タワーの三分の二もある、とんでもなく、ものすごい大きさの剣だって言うことが。

 なるほど、こんなに大きければ。

 大地を裂いて、新たな世界を作り上げることが出来るかもしれないって思えた。

 そんな剣が立ち上がり。

 ゆっくりと、迫力を込めて、巨大な刃が高々と天を向いたかと思うと。

 鳴った。

 ……ううん。

 吼えたんだ。

 まるで、泣き叫ぶように。



『ハーーオーーウーーー!!!!』



 剣が、自分の主を探しているんだ……!

 自分のカラダの一部を探しているかのように。

 離れていたら、狂うかもしれない。

 そんな。

 身を裂くような雄叫びは、フェアリーランドや、キングダムリゾート全部をゆるがせた。

「お父さん……!
 0さん……!」

 こんな、悲しげに泣く剣が。

 こんな、信じられないほど大きな剣が、元は、わたしの大好きだった人たちなんて!

 信じられなくて。

 悲しくて。

 思わず叫んだ時と同じくして、剣は、ものすごい光を放って、変わってゆく。

 ……ヒトの形に。

 わたしも見たことのある、ヒトの姿に。

「……蒼のセイラ!?」

 そう。

 変身の輝きが収まっても、全部は消えず、うっすらと。青白い光を放ち。

 その巨大さは、変わらないまま。

 夜の闇に紛れるには、明るく、大きすぎるその姿は、はだかで。

 この前の朝、わたしをベットで抱きしめた、0と『星羅』の融合した姿だ。

 なんで?

 0は、お父さんと融合したのだから、蒼い髪のフルメタル・ファングがそこに出現したと思ったのに!

 でも、そんな驚きは。

 次に起こったことに比べれば、本当にささやかな事でしかなかった。

 巨大な蒼のセイラは、自分のひざ裏まである、長い蒼い髪を振り乱し、右の握り拳を天に高々と突き上げると、改めて叫んだんだ。



『雷(いかずち)よ!!!!』


 すると。

 月光の輝く空は、さぁーーっと黒雲に覆われ。

 これまた、とんでもなく大きな光の束が閃いたかと思うと。

 次の瞬間、轟音がとどろいたんだ。



 どっががんっっっっ!!!



 
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