はだかの王子さま


 べきべきべきっっっ!




 ゴブリンの声は、巨人が、北塔の屋根を引きはがした音に、まぎれて消えた。

 そして、ぽっかりと開いた穴から、蒼い髪のセイラの顔が、見えた。

 その光景に、星羅の顔って、大きくなっても、すごくキレイなんだ、なんて。

 どうでもいいことを、ぼんやり考えているわたしに向かって、巨人はゆっくりと手を伸ばしたかと思うと。

 ベッドごと、そっとすくうようにわたしを持ち上げて、ささやいた。



『やっと……あなたに、会えた。
 我が真なる主(あるじ)……覇王……よ』



 …………。



 ……って!




 えええええええっっ!




 一体、ダレが『覇王』だって……!?


 わたし!?



 言葉なんて思いつかず、ただ、ただ眺めるしかないわたしに、巨人は言った。

『数日前、我は、中途半端に目覚め。
 ゆえに。
 その我に触れたあなたも、その身に掛かっていた魔法が外れ。
 不完全な覇王として、姿を少し変えるだけに、留まってしまった。
 しかし、今は違う。
 覇王の御堂で、完全に目覚めた我は、あなたを完全な覇王に誘(いざな)える。
 我が愛しき覇王よ、願いたまえ。
 自分が世界を司る覇者であることを。
 完全なる覇王となれば世界、全てが、あなたのものだ』

 うう~~んと。

 つまり、ウチで星羅と0さんが、融合した時は『覇王を目覚めさせる剣』としては、不完全だったから。

 お父さんがわたしにかけた、姿を変える魔法が解けちゃった……のかな?

 そして、モノが食べられないほど調子悪いのは、このせい?

 ……でも。

 一番の、問題は……

『あの……わたし。
 特に『覇王』? ってやつになりたいとは、ちっとも思っていないんですが……』

 って、コト!

 小さいころによく見てた魔法少女の話とか。

 なんとかスーツを着て戦う男子が良く見る特撮、みたいな。

 正義対悪っていうモチーフの話だと、さ。

 大抵『悪役』って言われるヒトビト。

『世界征服』とかって目標にしているみたいだけど。

 わたし、別に『世界』を丸ごと一つ……ううん、ビッグワールドも合わせると、二つか……なんて、そんなの欲しくない。

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