はだかの王子さま
 剣を使い、地球から大陸を引きはがす、とんでもない力を持っているっていうのなら。

 きっと世界中の誰にも、どんな軍隊にも、わたし負けない。

 だから、その力を有効利用すれば、世界は平和になるのかな?

 けれども、大きな力を持って、自分勝手に突っ走ったら。

 ううん。

 気に入ったどっかの誰かの味方になるって決めただけで。

 色々なバランスを崩して、それこそ『世界を滅ぼす覇王』になりかねない。

『誰かと戦うなんて、絶対、イヤ』

 呟くわたしに、巨人が笑う。

『戦う?
 あなたは、この細腕で剣を取るのか?
 花のような唇で、誰かへの罵声を紡ぐのか?
 そんなことは、我がさせない。
 覇王よ。
 あなたの力は、そんなモノではないのだから』

『どういうコト?』

 戸惑うわたしに、巨人は深々とため息をついた。

『……やはり、完全に目覚めたまえ、我が主よ。
 昔日(せきじつ)を忘れ、無欲では、我もこの時代に蘇ったかいもなく。
 あなたの力は、あなた自身がご存じのはずだから』

『わたしを何かに変えるより、お父さんと、0さん返して……』

『それは、無理だ』

 覇王の御堂の前で、完全に融合した二人は戻らない。

 それより、自分の幸せを考えろって偉大な剣は言ったけど!。

『だから。結構ですってば! 今のままで、十分幸せだし!』

 わたしは、はっきり『イヤ』だって言ったのに!

 巨人のセイラは、最後までわたしの話なんて聞いちゃくれなかった。

 まったく!

 ビッグワールドのヒトビトって、長生きのくせに、どーしてそろいもそろってせっかちで、強引なんだろう!

 わたし今、この状態でも、十分起きている気がするけれど。

 この巨人に直接触れられれば『覇王に目覚める』らしい。

 巨人は玩具の家具を持つように、片手で軽々とベッドとわたしを支え。

 もう一方の手をそっと近づけて来た。

 ……怖い。

 大きなサイズの巨人の手は、とても注意を払ってくれているから、大丈夫だけど。

 この手に触れたわたしが、どうなってしまうのか知るのが、ものすごく、怖い。

 巨人の手から逃げ出そうにも場所がなく、そもそも、ベッドから起き上がるのがやっとなくらいだ。

 身動きなんて一つも取れないわたしが、唯一出来ること。

 怖いことを見ないように、目をぎゅっとつぶったその時だった。

 
 
< 397 / 440 >

この作品をシェア

pagetop