はだかの王子さま
ひゅっと、何が風を切り。
そして、ベッドがぎしり、と軋んだ。
と、思った次の瞬間。
わたしは、誰かに抱きあげられて、空に浮いていた。
……一体、何が起きたんだろう……?
恐る恐る、片目を開けると、そこに。とても大好きな顔があった。
「星羅!」
そう。
どうやらわたしは、星羅にお姫様だっこで抱えられ、巨人の手の上のベッドから逃走しようとしてる最中みたいだった。
ハンドが、星羅をベッドまで運んで囮になり、巨人の前でわたしたちを隠すように、大きなアゲハの羽を広げ。
星羅がわたしを抱えて、白薔薇宮殿に飛び移ろうとして、止まる。
ビッグワールドで見せた、馬車のすぐ下からのわたしを抱えてやったジャンプを見れば。
ベッドから、わたしたち二人が降りれそうな白薔薇宮殿の外壁までは、大したこと無かったけれど。
その高さに、一瞬、ひるんだみたいだった。
そう言えば、星羅、高いところがあんまり得意じゃないって……!
さっきはなんとか、ハンドにぶら下がって浮いてはいたけれど。
最初に、ウチを壊されてから。
美有希達に捕まった主な原因は、急に高い所に釣りあげられちゃったから、じゃなかったっけ……?
「星羅?」
心配になったわたしが、ささやくと。
星羅はちょっと堅い表情のまま「大丈夫だ」ってささやき返し、揺れるベッドを蹴って、飛んだ。
ところが。
そのひるんだ一瞬が不味かった。
ハンドの目くらましを逃れた、蒼い巨人のセイラの手が、わたしの髪を……かすったんだ。
わたしの素肌じゃない、たかが、髪。
別に引っぱられたわけじゃないし、大したことない……と、思ったのに。
巨人に触られた髪の先から、わたしゆっくり変わってく……?
わたしを抱えた星羅のジャンプが、無事に決まり。
屋根をはがされ壊れた……けれど、まだ、足場のしっかりした白薔薇宮殿のゲストルーム跡に降り立った頃には。
わたしの髪の毛先が、自分の力で金色に輝き出した。
それと一緒に。
一拍ごとに、どくん、と心臓の音が高鳴り出し、妙にうるさかった。