はだかの王子さま

 どうやら。

 わたしのベッドでやり取りした時の、ちょっと下品な蒼いセイラが『本物の剣』で間違いないみたい。

 本物の剣である星羅の代わりに、お父さんの……フルメタル・ファングの意識を呑み込んで復活し。

 だいぶ様子を変えている、なんて言う覇王の声を聞きつけて、蒼のセイラは咆えた。

『我があなたの剣だ、覇王よ。
 証拠に、あなたに触れて、昔の記憶を呼び覚ますことが出来たろう?』

 覇王の記憶を呼び出させるのは、本物の剣だけ。

 あなたに会えなかった、長い長い年月の間に、何か異物が入り込み。完璧な姿や口調は叶わなくても。

 こうして昔の記憶がよみがえり、覇王を目覚めさせることが出来たのなら。

 この時代では、我が本物の『ゼギアスフェル』に他ならない、と蒼いセイラは主張した。

 そして、蒼のセイラは巨体をかがめ……覇王の前にひざまずく。

『我の、この身が砕けるまで。
 あなたは、この二つの世界に『愛』を持って君臨する『覇王』だ。
 この世に生きとし、生けるもの全てが、あなたを愛し、追ってくる。
 そのなかで、あなたが傷つかぬよう、要らぬものを排除し。
 あなたの望みの実現のため働く者を、まとめ上げることが、我の喜びであり……使命だ』



 我の愛しい覇王よ。

 さあ、我が元に来たれ。

 そして、この時代でのあなたの望みを言え。


 剣の言葉に、覇王は戸惑ったように上を見上げ……ただはっきりとした意志を持って、金髪の星羅の腕を押しのけた。

「真衣……! 行っちゃだめだ……!」

 星羅の声は、わたしに聞こえはしたけれど!

「……ダメ……無理……そう」

 なんとか出来るのは、星羅の声を聞くことと、喋ることぐらいだ。

 他の感覚は、全部覇王に持って行かれちゃった……ような気がする。

 わたしの意志に反して、覇王の望みのままに。

 わたしのカラダは、星羅から離れ、蒼い巨人のセイラを望む。

「真衣……!」

「星羅! わたし、イヤだ! 星羅がいいのに!
 金髪の星羅がいいのに……!」

 今まで自由だった、声も、耳も、だんだん覇王に蝕まれ、わたしの自由が効かなくなってゆく。

 叫ぶ声もかすれだし、もう出なくなる……と思った寸前だった。

 星羅は、はっと何かに気付いたように叫んだ。

「真衣! 巨人に願って!
 ……ヒューマン・アウトだ!!」



 ヒューマン・アウト!?
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