はだかの王子さま
 ヒューマン・アウトって、それ、獣の姿のヒトが、人間の姿になったり。

 何かに化けることが出来るヒトが、本当の自分になること、でしょう!?

 覇王の剣は、いまさっき!

 剣の状態で扉をくぐり、まさにヒューマン・アウトして、今の巨人の姿になったんじゃない!

 これ以上、この巨人にどう変われって?

 例えば、ヒューマン・アウトすれば、巨人を止めて普通の人間サイズになるかも知れないけれど!

 問題は『大きさ』じゃないでしょう!?

 そう、だいぶ混乱しているわたしに、金の星羅は、叫ぶ。

「その覇王の剣は偽物だ!」

 ……え?

 覇王を目覚めさせ、その覇王自身から『魂は本物』ってお墨付きをもらった蒼のセイラが?

 混乱が増すばかりのわたしに、星羅は続けて言った。

「その剣の半分は、フルメタル・ファングだ!
 彼の力は、吸血により、相手の性質を完全にコピーすることだ!
 きっと、フルメタル・ファングは、僕になり変わったまま、覇王の御堂の前で魔剣0と融合したんじゃないか!?
 だからもし!
 フルメタル・ファングがヒューマン・アウトして、僕の姿から自分の姿に戻ったら!
 この巨人は『覇王の剣』で居られなくなる!」

 ……そ、そうね。

 覇王自身も金髪の星羅を見て『半分』って言ってたし!

 蒼い巨人の顔は、お父さんじゃなく『星羅』だ。

 それに、何よりわたしは金髪の星羅が、魔剣0と融合するのを見たはずだった。

 でも!!!

 そんなの!

「ただ……覇王の剣が……お父さんから……星羅に移るだけで……何の解決にもならないんじゃ……!
 剣は……一度融合したら……もう戻らないとも……言ってたし……!
 わたしの……声なんて……届かないかも……しれない……」

 そんなわたしの後ろ向きな考えを、星羅はあっさり吹き飛ばす。

「剣は『我のこの身が砕けるまで』真衣が覇王だって、言っていたじゃないか。
 ……だったら、一度、砕けてみればいいんだ。
 このまま何もしないより、やってみた方がいい。
 だから、真衣! 覇王の剣に!
 ……ううん、フルメタル・ファングに呼びかけてみて!
 元に戻れって!!
 今まで、彼と培ってきた絆を信じて!!
 真衣の声なら、絶対、フルメタル・ファングに届くよ!!」


 
< 405 / 440 >

この作品をシェア

pagetop