はだかの王子さま
『百才を超えても、更に五十までは手の届かぬ、成人したばかりの小童(こわっぱ)が、よくもまあ、これだけくるくると知恵の回る……』

 覇王は、くっく、と喉を鳴らした。

『そなたの親代わりの、おひとよしの剣士のことじゃ。
 先々を鋭く読み、事前に手を討つ力は称賛に値するが、解決方法が過激な上、面倒事を独りで引き受け過ぎじゃ。
 あとでゆっくり、茶でも飲みながらコトの顛末(てんまつ)……話を聞いてやれ。
 ああ、その時、どんな莫迦げた話を聞いても、あまり剣士を叱るでないぞ?
 全てそなたの未来(さき)を案じてしたことじゃ。
 本当に莫迦じゃが、良い男だしの。
 もちろん、我がゼギアスフェルの次に、じゃが』

 そこまで言って、今まで笑ってばかりいた覇王が、一瞬すっと表情を改めた。

『賢く。
 目的のためには、手段を選ばず。
 しかも、必要とあれば我が身さえ、あっさり投げ出す覚悟のある、思い切りのいい男は、怖いぞ。
 使い方を誤れば、ヤツこそ。
 真に、世界を滅ぼす覇王……いや、たった一人で全てを破壊しつくす、魔王になりかねん。
 ま、これからは注意して見てやることだ』

 そう、小さく呟くと。

 覇王は、巨人の前に……蒼いセイラの前に立ち、改めて両腕を伸ばした。

『さあ、娘よ、剣に願え。
 例え、今まで親代わりであったとしても、一度剣の一部になった以上。
 真の主(あるじ)は、そなたになった。
 ヤツの目が覚めるように、名前を呼び、願いを叫べ』

 その言葉のあとに、今まで覇王に支配されていた喉がすっと、軽くなる。

 そして、覇王に促されるまま、わたしは、声の限りに叫んだ。



「フルメタル・ファング!!
 ヒューマン・アウト!!!」


 その途端。


 とても、眩しい光が巨人を包み。


 激しい光が、夜のフェアリーランドを切り裂き、人工島キングダムリゾート中を覆った。


 目なんかとても開けていられない光の量に、辺りの騒ぎと争いは収まって静かになり、わたしは。

 せいぜい皆で仲良く達者に暮らせ、と笑う、覇王の上機嫌な声と一緒に。

 人間サイズの蒼いセイラと、覇王がにこやかに手を取り合って、フェアリーランドの大扉に吸い込まれてゆくのを見たような気がしたんだ。















 

 
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