はだかの王子さま
欲望の狂演
「……わぁ、すっかり、元通りだねぇ」
等身大の鏡に映ったのは、いつものわたし、だった。
黒の長いごわごわの髪。
日本の街にだったらどこにでもいそうな、地味な顔立ちをした、痩せっぽちの女の子、だ。
鏡の中に映るのは、十六年間見慣れたごく普通の顔で……
わたしは、深々とため息を、ついた。
「……これでようやく、終わったって……気がするね」
そんな、わたしのココロからの声に。
わたしと一緒に、心配そうに鏡を覗き込んでいた星羅も、ほっとしたように笑った。
ここは、白薔薇宮殿の地下迷宮。
星羅が普段仕事場にしているデザイン工房の企画室だ。
華やかなフェアリーランドの衣装部屋の一部らしく。
色々な衣装(コスチューム)が、大量に、雑然とぐちゃぐちゃに……なんて言うと管理人さんに怒られるので、訂正すると。
その量にしては、まあ、なんとか整然とハンガーにかかってる、通い慣れたいつもの部屋だ。
さっき。
わたしの声で、剣の一部になっていたお父さんは、元の自分に戻ると。
キングダムリゾートを覆った眩しい光がすっかり消える前に、自分は、ニ、三歩よろけただけですぐ行動した。
「真衣の本性は危険だ。
ビッグワールドを創世した覇王の魂に触れた今。
その姿のままだとお前に自覚がなくとも、人を惑わし、争わせてしまう。
この混乱中に、一刻も早く身を隠す。
来い!!!」
「う、うん、わかった!」
お父さんの必死な叫び声に、わたしは、慌てて頷いた。
『覇王』は、わたしがお父さんの主(あるじ)になった、と言った。
だから、お父さんが、いきなりわたしの前でひざまずき出したら、どうしょう、なんて思ったけれど!
いつもと変わらず、テキパキとしゃべる感じにほっとした。
けれども。
返事は出来ても、そもそも動けない。
そんなわたしを、お父さんは左肩にかかえあげ。
蚊取り線香みたいに、目をくるくる回している、子犬ちゃんな魔剣0の尻尾。
それに、強い光で頭痛を起こしたらしく。
頭を抱えてるハンドのクビねっこを右手でひっつかみ。
誰も居ない地下迷宮に、転がるように、飛び込んだんだ。