はだかの王子さま
「……混乱の途中で悪いが、俺は今夜、大扉をくぐって、ビッグワールドに行く。
 ゼギアスフェル……いや、桜路。
 これから一年、真衣のことを頼みたい」

「「……え?」」

 お父さんの言葉に、驚いたわたしと星羅の声が重なった。

「そんな、なんで急に……」

「さすがに、今、はないでしょう」

 そ、そりゃあね。

 今、わたし、星羅とラブラブで。

 星羅の方も、落ち着いたら二人で一緒に暮らそうか、なんて言ってくれたけど!

 少なくとも、今年は一年間。

 ビッグワールドと、ここを繋ぎ、しかも、ヒトが通れるような扉は無いって、王さまが言ってた……よ?

 今夜、十二時。

 フェアリーランドの扉を通って。

 向こう側の世界のビッグワールドに行ってしまったら。

 今度、このフェアリーランドの大扉が開く来年まで……会えないってことだ。

 ところが、驚いているわたしを無視して、お父さんは、淡々と言葉をつなげた。

「ビッグワールドを創世した剣も、覇王も、魂はもう、めったなことは蘇っては来ないだろう。
 ビッグワールドの覇王の御堂が壊されたり。
 真衣が、覇王になる、と言い出さない限り、一応解決したと言ってもいい。
 多分俺は、もう一度桜路の血を呑んで変身しない限り『本物の覇王の剣』にはならず。
 魔剣と桜路は離れていた方が、新たに『覇王の剣』が復活することは、ない。
 しかし、それは。
 中身が一万年前のヒトから真衣と我々に変わっただけに過ぎず。
 この時代に『覇王』も『剣』も存在することになったのだ。
 それにしては、良く判らない所が多すぎるからな。
 事実関係がはっきりするまで、俺と魔剣0、真衣と桜路は異界を挟むくらい、遠く、別に居た方がいいだろう」

 お父さんは、覇王とその剣について、冷静に分析して次に。

 他に、ビッグワールドでフルメタル家の当主、門番の交代式も執り行わなければならないとも言った。

「ついては、俺が正式にシャドゥ家を使えるのも、最大で今年一杯だ。
 歴代の当主は、交代と同時に、その場で権利を次代に渡す習慣だが、すまんな、ローザ。
 もう覇王が復活しない、と確信できるまで、期限いっぱいまで彼らを使わせてもらう」

 
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