はだかの王子さま
 王さまは、可笑しそうに笑う。

『愛するヴェリネルラと離れないように、死してなお、ヒトの魂を見わけ。
 輪廻転生を繰り返す『覇王』を探すことが出来る『剣』の性(さが)が欲しかったのだろう?
 我が腹違いの弟、本物のゼギアスフェルを襲ったのか、騙したのか知らないが、そなたは、まんまと姿をコピーして偽物のくせに『本物の剣の一部』になることが出来たのだ』

 そう、王さまは語り続ける。

『そして、来年までの一年間。
 人が出入りすることのできる扉がないことを知っていたそなたは、ゼギアスフェルを扉の向こうに追い返し、フェアリーランドの大扉を完全に塞いでしまおうと考えた。
 扉を開ける時に、血を使うように、閉める時も血がいる。
 覇王が復活してしまい、収拾がつかなくなった時も血が必要になる。
 それを見越して、休日のはずのフェアリーランドにヒトを集めた』

 そ、それって、もしかして……

『お父さんがフェアリーランドのお休みを止めてみたり、入場料をタダにしたのは。
 扉や、覇王のために血を集めやすくする……ため?』

 わたしが、お父さんに呼びかけた質問なのに、王さまが答えた。

『そうだ。
 そして、その血を提供する者のことを、普通は『生贄(いけにえ)』と言うのぅ』

 生贄!

 言われて思いつくのは、何かの儀式のために殺される、猫。子ヤギに……ヒト。

 何かのホラービデオで見た時は、みんな血を流して死んで。

 怖がったわたしに『こんなのウソだから大丈夫だ』って受け合ってくれたのは、お父さんだったのに。

 ……沢山の生贄を?

 覇王は、お父さんが変なことをしても、許してやれって言ってた。

 これが、それ?

 王さまの話は、全部間違っている、とは言えない響きがある。

 全部が真実だったらどうしよう!

 お父さんとわたしは血が繋がってなく、わたしの本当のお母さんを愛してたコトは、いい。

 だって色々事情があるし。

 でも、お母さんの代わりに、わたしを……愛す?

 しかも、星羅をこっちの世界から追い払って?

 王さまの言ったことだもん。

 わたしの気を引くためについたウソかもしれない。

 お父さんを信じてる……だけど。

 聞いてみずには、いられなかったんだ。

「お父さん……
 王さまの話って、本当のコト……?」って。
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