はだかの王子さま
『う……』

 お父さんの言葉に、王さまは言葉を失い。

 その変わりに、星羅が静かに聞いた。

『それでは、なぜ君は『覇王の剣』に割り込むような真似をしたんだ。
『剣』は、死んだ後に魂を見極め、覇王の魂を探せる。
 今生では、真衣のパートナーを僕に譲っても。
 死んで棺にいるときや、生まれ変わることが出来たとき。
 今度は僕に代わって、自分が永遠に真衣の隣に居るため、ではないのか?』

 星羅の質問に、お父さんはちょっと笑った。

『どうやら、俺は。
 今まで自分では気がつかなかったが、莫迦で、ナルシストである上に、執念深い性質(たち)らしい』

『フルメタル・ファング!』

『怒るな、桜路。
 少しばかりでもふざけてないと、やってられん。
 いいか、耳の穴をかっぽじってよーーーく聞け。
 何度も言っているが、俺が愛する女(ひと)は、たった一人だし。
 剣には俺がどうしても欲しかった力が一つある。
 ……それを手に入れたかったのだ』

『それは、なに?』

『死したる者の魂を見わける、力、だ。
 ……これで俺は、俺の愛した『本物の彼女』を探す……永遠に。
 どんなに魂の数が多くとも、今度こそ彼女を手に入れる。
 彼女と共に棺に入るまで。もしくは、一緒に生まれ変わるまで、ずっと探し続ける予定だ』

『……フルメタル・ファング』

『愛しい娘の苦難を永久に払い続ける覚悟は、もちろんあるが、動機が不純な上、所詮(しょせん)俺は『覇王の剣』としては『偽物』だからな。
 どれだけ魂を見わける力が出るのか。
 どれくらい覇王に引かれて自由度を失ってしまうのかは、さっぱり謎だが、やってみる価値はあると、踏んだ。
 ここで剣の力を手に入れておかないと、絶対に彼女を探せないことだけは、判ってたからな』

 そんなお父さんの話に、星羅は一応納得したらしい。

 けれども、彼は険しい顔のまま、お父さんにもう一つ聞いた。
  
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