はだかの王子さま
『そして君は、自分の夢をかなえるため、休日のはずのフェアリーランドにヒトを集め……生贄にしようとした?
 雷を呼んで、キングダムリゾートから本土への橋を落とした時本当は意識があって、わざとやったんだろう?
 君は、何万人もの人間を生け贄の犠牲にしようとしたんだ!』

 叫ぶ星羅に、お父さんは肩をすくめて答えた。

『……まあな』

 今度は、お父さんも否定せず、星羅の瞳がキツく光った。

『フルメタル・ファング!』

『怒鳴るな。
 俺の都合以前に、お前が人間の姿を手に入れた以上。
 後はどんなきっかけで魔剣が復活し、ひいては覇王の目覚めに繋がるか、判らなかったんだ。
 何も準備がなく、覇王が復活、力を勝手に使って暴れれば世界が滅びる。
 最悪、ビッグワールドとこっちの世界に、覇王と剣を別々にしなければいけなかったから、この大扉開門、閉門に合わせて準備をしなくてはならなかったんだ。
 それに、生贄が多い、ということは、一人当たりの失血の負担が減るっていうことだ。
 なるべく多くの血を集め。
 ヒトの命を奪わずに済む最良の方法がこれだった』

『……なんて、無茶苦茶な!
 そんな大きなことをやるつもりだったら、僕に一言ぐらい相談を……』

 真衣だって心配したんだぞ!

 そう言ってくれた星羅に、お父さんは、鼻を鳴らした。

『覇王と剣を出し抜こう、って言うのにお前と真衣に相談して、どうする』

 結果的に、覇王に復活の意志はなく。

 俺が絡んだおかげで、魔剣0と星羅は今の所、引き寄せられることも無く。

 誰も傷つかなくて、よかった。

 なんて、あっさり言ってのけるお父さんに、頭痛がして来た。

 めまぐるしい変わる状況に、言葉を出せないでいるわたしに、お父さんはふっ……と。

 空気に溶けるような微笑みを見せて、言葉を続けた。

『しかし、ま、だいたい予定通りコトは進んだが。
 俺にも誤算は出た』

 言って、お父さんは、獣の姿の王さまに、剣をつきつける。

『いつもは『こちら側の視察』と言ってもやる気なく。
 扉が開いている二十四時間こちら側にいるわけじゃねぇ。
 なのにわざわざ、こんな時に限って数日も前から来やがって!
 挙げ句の果てに真衣が欲しいだと抜かしたこいつだ!』
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