はだかの王子さま
 と、同時に!



 地震だ!!



 そう、震度にしたら、いくつぐらいだろう!?

 とてつもない大きさの縦揺れが、大地を揺るがしたんだ。

 この衣装部屋、企画室の隅に積み上がっていた帽子の箱が、軒並み倒れてバラバラになった。

 元に戻った自分の姿を写した等身大の鏡も、こちらに倒れて来……!

 危ない、と身をすくませたわたしを、星羅が庇う。

『真衣! 大丈夫!?』

『う、うん!
 平気!
 でも星羅が!!
 鏡が割れて、ガラスが!』

 星羅の着ているマントつきの王子さま服は丈夫で、割れたガラスはつき刺さったりしてないけれど!

 顔をかすめた一枚が、ほほを薄く切って、血が滴っている!

 けれども、星羅は、滴る血を拭いもせず、わたしを、もっと強く抱きしめた。

『僕は大丈夫!
 それよりも、これは『地』の魔法の最高位ソドニキュラエスの力だ!
 もっとでかいのが来るぞ!』

 って!

 地の魔法使いだから、地面の下にいる王さまの声もソドニに聞こえるんだ。

『みな、気をつけてください!
 ソドニキュラエスは、この部屋ごと、我々を地表に出すつもりです!!』

 美有希を庇ったハンドの叫び声に、えっ! と思うヒマもなかった。

 みしっ、と部屋が軋んだかと思うとゴグン、っと不気味な音が音がした。

 そして、昇ってゆくエレベーターに乗った時みたいな、変な浮遊感を一瞬感じたな、と思ったら!

 部屋四方を囲む壁の丸々一面が下にずれた。

 開いた上の部分から、土が大量に入って来て、同時に部屋の電気が消える。

 続いている地震と一緒に、部屋ががくん、と傾いて美有希が悲鳴を上げた。

 暗闇の中に流れ込んでくる土砂に、半分吹き飛ばされるように星羅が少し離れた……と感じた時だった。

 土まみれの毛皮が、星羅との間に素早く割り込んで来たかと思うと、そのままわたしをさらってゆく。

『星……羅……!』

『真衣!』

 叫んで伸ばした星羅への手は一瞬遅く。

 毛むくじゃらは、地下の部屋が地表まで持ちあがり、出来た壁の隙間から、外へ飛び出した。

 月明かりで見えた、そのヒトに限りなく近い獣の正体は、もちろん、王さまだ……!

 そして目の前には、大きな黒い竜、ソドニがいた。

『もう、いや……! 放してしてよっ!!』

 わたしがいくら叫んでも聞いてはくれず、王さまは、ただげらげらと笑った。
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