はだかの王子さま
 大扉が開いた時、星羅を縛っていた鎖を一刀両断した剣が、お父さんの手の中で出現した。

 刃の長さだけだって、わたしの身長ぐらいあるじゃない!

 その大きさにぞっとした。

 これは、刃先でぱっちん、と鎖を切るだけの剣じゃない。

 本当に竜退治(ドラゴンバスター)用の剣だ。

 これだったら、ソドニがどんなに大きくても、剣は、きっと竜の肉を削ぎ落とす。

 そして、ソドニの方だって!

『地』の最高位の魔法使いなんだもん。

 家ぐらいの大きさの水の固まりをハンドをぶつけ。

 地震を起こし、地下から部屋を持ち上げる竜が、簡単にやられるとは思えない……!

 二人が戦ったら、怪我だけじゃ済まないよ!

 どっちかが、死んでしまうかもしれない。

 フェアリーランドが。

 ううん、

 人工島キングダム・リゾートが無くなっちゃうかもしれない!

 止めなくちゃ……!

 絶対、止めなくちゃ、ダメだ!


 ……でも、どうやって!?


 わたしは、王さまに捕まって、何も出来ないし!

 星羅に頼んでも、お父さんはともかく、王さまの味方のソドニが大人しく話を聞くわけがない!

 焦るわたしをぎゅっと抱きしめ、王さまが笑う。

『ゆけ! セイラムド・フォン・ソドニキュラエス!
 フルメタル・ファングを踏みつぶしてしまうのだ!』

 って!

 王さまの莫迦!

 ソドニを煽(あお)ってどうするのよ!

 王さまの命令に、どすどすと、巨体の割には素早い動きで、お父さんに向かってゆくソドニを泣きそうな気分で眺め……わたし、そっか、って気がついたことがあった!

 そうよ!

 ソドニの本名って『セイラムド・フォン・ソドニキュラエス』なんじゃない!

 無理かもしれないけど、やってみる!

 わたしは、王さまの腕の中で、息を大きく吸うと、力一杯叫んだ。

『セイラムド・フォン・ソドニキュラエス!!
 もう止めて!
 フルメタル・ファングと戦わないで!』

『そなたが命令しても無理だのぅ
 なぜなら、あの黒竜の主は『我』なのだから』

 王さま、なんか言ってるけれど無視!

< 428 / 440 >

この作品をシェア

pagetop