はだかの王子さま
 なにしろ。

『偽物』とはいえ『本物の覇王の剣』の一部になっちゃったし。

 本当に悪くて、ごめんね、って頭を下げたら美有希は笑った。

「いいのよ!
 父上は、そもそもお役目大事、な方だったし。
 あたしのコト『ヴェリネルラ』って呼んでくれたんですもの!
 ……それに、ね?
 父上とは、結局。
 今まで一緒に暮らしたことは無いけれど。
 近くにいた期間は、真衣よりずっと長いのよ?」

「……って、ええと。
 それって、美有希は見かけどおりの年齢じゃないってこと?」

「失礼ね! あたしだって十六才よ!
 ……なんてね。
 本当に十六才の真衣と違うの。
 ビッグワールドの年齢に換算したらそうだけど。
 こっち側だと八十才かな?」

「八十才!」

 驚くわたしに、美有希は笑う。

「まだまだビッグワールドの成人式の百才には届かないコドモよ?
 だけど、父上が当主就任前に、実際にフルメタル家をきりもりしていた年と同じぐらいだって聞いてるわ。
 大丈夫、あたしも頑張れる」

 そんな、美有希の力強い声を聞いた時。

 別の声がわたしを呼んだ。

『ううう~~我が愛しのヴェリネルラよ』

『王さま! まだビッグワールドに帰らなかったんですか!?』

 見れば王さまが、まだヒューマンアウトもせず、まるきり狼に近い姿でここに居た。

 驚いて出た声に気がついたハンドと賢介が、わたしと王さまの間に無言で割って入り、戦闘態勢を取ったけれど。

 黒髪に銀メッシュの人間に戻ったソドニが慌てて止めに入った。

『帰ります、帰ります!
 キレイさっぱり後腐れも未練もなく、帰らせていただきます、私の真なる主、覇王さま!
 けれどもビッグワールド王が、最後に一目ナイトウマイさまにお会いしたいと!』

『莫迦もの~~!
 未練ならたっぷりあるぞ!
 ナイトウマイが、ビッグワールドに来られないと言うのなら、我がこっち側に残る!
 ……と思ったのだが。
 ソドニに止められてのぅ』

『当たり前です!
 王は覇王の剣が復活直後、大扉が安定しないうちにこちら側の世界にいらっしゃいました。
 そのため、獣の姿から元の姿に戻れないではありませんか!
 一度ビッグワールドに帰って、姿変えの魔法使いか、グラウェの大神官にご相談する必要があります!』

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