はだかの王子さま

 深々と頭を下げるソドニに、ビッグワールドのコトは、判らないし、ソドニが良いようにお願いします、って手を振りながら、思ってた。

 そ、そう言えば星羅も似たようなこと、言ってたなぁ。

 もしかしたら、ビッグワールド王も、本当はそんなに悪い人じゃなかもしれない。

 やめて! って言っても全然聞いてくれないし。

 ゴブリンさんたち、いじめるから、わたしは、どーーしても好きになれないけどね。

 そう思いながら、王さまをむーー。と睨んだ直後だった。


 星羅が殴られる音を聞いたのは。


 異世界への扉が閉まる時刻も迫って忙しかったのに。

 お父さんは、全部の仕事を一時中断してまで、拳を握り。

 星羅は、避けもせずに黙って頬を殴られたんだ。

「きゃーーっ!
 お父さんっっ!
 なんで星羅を殴るのよっ!」

 星羅が、王さまの手からわたしを助け出してすぐ。

 星羅は、わたしを元の『真衣』に戻してくれたから、今では、だいぶ調子よくなっていた。

 だからわたし、殴られた星羅の方にかけよることが出来たんだけど。

 星羅は『いいんだ』と、二人の間に割って入ったわたしを優しく押しのけた。

 そして、強い眼差しで、お父さんを見つめた。

「……僕は半端な気持ちで真衣を『自分のもの』にしたわけじゃない」

「あたりまえだ!!
 そんな簡単に真衣を抱いてみろ!
 いくら貴様でも、魔剣0で真っ二つにしてやる!!」

 うぁ……

 ヒトの大勢いる所で、なにをしているのか、と思ったら……!

 わたしは、すごく恥ずかしかったけれど、星羅とお父さんは真剣だった。

「真衣は、大人になるまで、嫁にはやらん!
 そして、婚前交渉は大禁止だ、と再三、再四言っておいたはずで。
 それをしないことを、貴様は自分の名にかけて誓ったはずじゃなかったのか?」

『世界を滅ぼす覇王の剣(セイラムド・フォン・ゼギアスフェル)の名は、そんなに軽かったのかとお父さんは叫ぶ。

「ちょ……ちょっとお父さんっっ!
 星羅は、別に乱暴をしたわけじゃないし!
 わたしは、星羅のコトを本当に……その、愛してるんだもの!
 却って嬉しかったんだよ?
 それに、あのときは……王さまに諦めてもらいたかったし……」
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