はだかの王子さま

 お父さんの言い方に我慢が出ず。

 わたしも一緒になって言ったら、お父さんは、そんなことは判っている、と怒鳴った。

「しかし、カラダを重ねると言うことは、単に二人の絆を確かめ合うっていうことじゃねぇ。
 次の命を育て上げるっていうことなんだ。
 それは、とても大変なことだし、責任も重い。
 しかも、それは、生まれてくる子ども運命を左右するだけじゃねぇ。
 育てる親の生活や、運命だって左右するんだ。
 しかし、真衣に、桜路にその自覚がきちんとあったか?
 単に、王から逃げるとか。
 自分たちの都合とかで先走ってはダメだ」

「お父さん……」

 そう。

 お父さんは、お母さんを愛して。

 わたしを引きとって、育て。

 だいぶその生き方を変えたんだ。

 お父さんの言葉に、星羅はうなづいた。

「……さすがに、子どもを一人育てあげた男の話は、違うな」

「ふざけるな、桜路」

「いや、僕は至って真剣だよ?
 フルメタル・ファング。
 僕が真衣に対して真剣じゃなかったことなんて、一度もなかったけれど。
 ……これからは、もっと広く考慮する」

 そんな言葉に、お父さんは手の甲で星羅の胸をどん、と叩くと。

 『真衣を頼む』って呟いた。

 その、寂しそうな声の響きが、なんかイヤな予感して。

 だから、わたしは、聞いてみずにはいられなかったんだ。

「……お父さん……一年経ったらちゃんとこっちの世界に、わたしの所に戻ってくるんだよね?
 覇王と剣がきちんと眠っているのを確認して。
 美有希のフルメタル家相続とか、門番の就任式とか、色々終わったら、すぐ」

「……」

「お父さん?」

 そういえば、賢介の師匠は予定通りハンドに変わり。

 デッキブラシ君や、砂糖壺さんなんか。ニ十匹のゴブリン達も、こっちの世界においてゆくって言ってた。

 たった一年間、ビッグワールドに行くだけだし。

 ビッグワールドの家の方が、お父さんにとっては百年以上住んでた『自宅』なんだもの。

 主な荷物は魔剣0以外、何も持たずに出かけてゆくのは、そんなに変だと思わなかったけれど……

 よく考えたら、フルメタル家当主の座を譲り。

 フェアリーランドの門番を辞め。

 わたしを星羅に預けたら……お父さんには、何も残ってないじゃない!
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