はだかの王子さま

「本当の父親だって言う前王は、わたしを殺そうとしたんでしょう?
 それだけじゃなく、前王はお母さんだって……!
 お父さんは、そんな前王から、わたしを守ってくれたんじゃない!」

 必死に守って、育ててくれた『お父さん』を嫌いになんて、なれない。

 なりたくなんてない……!

 ヒトを殺した罪は重いけれど、自分が死んだら逃げるだけじゃない。

 償うこともできないじゃない!

 生きていようよ。

 きっと、どっかで何か返せることがあるかもしれない。


 いっぱい、いっぱい。

 お父さんの胸をぽかぽか叩きながら、しゃべったけど。

 涙があふれて、どのくらい『言葉』になったんだろう。

 お父さんの心に届いたろう?

 とても不安だったけれど。

 やがてお父さんは『……判った』って呟いて。

 わたしをぎゅっと抱きしめてくれたんだ。



 そして。

 ひとしきり、泣いて、泣いて、ようやく。

 わたしが。お父さんから離れた途端だった。

 止める間もなく星羅の拳が唸った。



 ばきっ! と。


 さっき、自分が殴られたのと同じぐらいの重さの拳を返して、星羅がお父さんを睨んだ。

「……桜路の拳も、容赦ねぇな」

 ててて、と低く呟いてお父さんは、殴られた頬をさする。

「当たり前だ。
 君が真衣をこんなに泣かしたんだからな!」

 星羅は殴られ、よろけたお父さんに足音高く、つかつかと近づくと。

 その胸倉を掴まんばかりに詰め寄って言った。

「フルメタル・ファングのおかげで、一応は覇王を制御出来たけれど、フェアリーランドはこのありさまだ。
 当分僕一人で踏ん張るけれど、覇王は復活したし、剣だってある。
 これから先、どんなふうにビッグワールドとこっちの世界が関わりあって行くかは、判らない以上、忙しいんだ!
 余計なことを考えず。
 向こうの用事を早く終わらせて、僕を手伝え!」

 ふん、と星羅は息を吐く。

「そして、僕と真衣はラブラブなんだからな!
 もちろん、時期も体調も考慮に入れてだけど、子どもはたくさん作る予定だ。
 そしたら、生まれて来た子ら全員。
 君のことを『お爺ちゃん』て呼ばせてやるから、覚悟しておけ!」
< 437 / 440 >

この作品をシェア

pagetop