はだかの王子さま
「真衣と正式につき合い始めて、人間の姿を手に入れた今年は、僕たちにとって、とても大切な年だ。
 ……だから、埋め合わせをさせて?
 真衣の誕生日の夜、さびしくない方法を考えたんだ」

「は……はい」

 うぁ……だめだ……っ!

 ……どきどきする……っ!

 このまま、見つめられ続けられたら、絶対、心臓がはれつ……するっ!

 本格的に、逃げ出そうとしたのに。

 ゆらゆらと揺れる、不安定な椅子ごと星羅に抱きかかえられて、逃げられず。

 そのまま、星羅の顔を正面から見つめるしかなくて。

 具体的な『埋め合わせ』が何なのか、良く判らないまま。

 わたしは、顔を熱で火照らせながら、うんうんっと頷いていた。

「わ……わたしは、大丈夫、よ。
 でも、寂しくない方法って何よ?」

 ドキドキしているわたしの様子を見て。

 星羅は、満足そうに自分もうなづくと。

 次に、ふっ……と真面目な顔をして、わたしの目を見据え。

 ………耳を疑う、とんでもないことを言いだした。

「今年の誕生日の夜は、僕の代わりに、誰か別な人間と一緒にすごしなよ?
 ほら、真衣には、いるだろ?
 幼なじみの人間の男が」

 そう星羅に言われて、わたしは、驚いた。

「幼なじみの男って……それ、賢介(けんすけ)のことを言ってるの?」


 信っじられない!


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