はだかの王子さま
「ああ。
 そうだな。真衣は、まるで。
 ヴェリネルラの花みたいに、キレイだ」

「え? ベリ……?
 何だっけ?」

「ヴェ、リ、ネ、ル、ラ。
 真衣は、見たことがないかな?
 春一番に咲く淡いピンクの花だよ。
 繊細で、儚いイメージだけど、実は、強くて優しいんだ」

 う~~ん。

 わたし、植物の名前ってチューリップや、たんぽぽみたいな、超~オーソドックスな名前しか知らないけれども。

 星羅は、花の名前にとっても詳しい。

 時々、この花のことみたいに、普通の植物図鑑にも載ってない花の事も教えてくれる。

 星羅が楽しそうに教えてくれた、ヴェリネルラっていう植物は。

 花の後に、真っ赤なハートの形をした、甘い実がなるんだそうだ。

 実は、普通生で食べるけど、ワインや、ジャムにしても美味しいらしい。


 ……桜の花、みたいなヤツかな?

 いやいや、ブドウみたいに、もう少し地味なやつなのかもしれない。


「わたしに、似ているっていう、その花は。
 きっと、お花屋さんに並ぶような花じゃなく。
 実を取るための花か。
 道端に咲く野の花、なんだろうな……」
 
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