はだかの王子さま
 
 無理無理無理~~なんて、手を振った時だった。

 ひょい、と教室の扉をくぐるようにして、長身の男子が教室に入って来た。

 校則ギリギリまで伸ばした、少し長めの黒髪。

 やや、目じりが下がっているけれども、そこが可愛い、だの、優しい、だのって評判のイケメンで。

 校内で一番か、二番目辺りにモテる彼が、朝の挨拶に、手をあげた。

「賢介!」

「守野君!」

 丁度いいタイミングに入って来た彼は、まっすぐわたし達の方へやって来た。

「おはよ~~
 朝から二人、テンション高いじゃん?
 なんか、良いコトあった?」

 賢介自身は、良いコトがあったらしい。

 ほとんど無神経なほど、機嫌良く。

 鼻歌だって、歌いかねないほどだった。

 それが、微妙にカンに障ったらしい。美有希が、ちょっといらいらとしながら、賢介に言った。

「ないわよ……!
 見て、判んない? 鈍感ね!」

 美有希が、びしっと、わたしに向かって指をつきつけたのを見て、賢介が「ん~~?」と顔を近づける。

 




< 54 / 440 >

この作品をシェア

pagetop