はだかの王子さま
無理無理無理~~なんて、手を振った時だった。
ひょい、と教室の扉をくぐるようにして、長身の男子が教室に入って来た。
校則ギリギリまで伸ばした、少し長めの黒髪。
やや、目じりが下がっているけれども、そこが可愛い、だの、優しい、だのって評判のイケメンで。
校内で一番か、二番目辺りにモテる彼が、朝の挨拶に、手をあげた。
「賢介!」
「守野君!」
丁度いいタイミングに入って来た彼は、まっすぐわたし達の方へやって来た。
「おはよ~~
朝から二人、テンション高いじゃん?
なんか、良いコトあった?」
賢介自身は、良いコトがあったらしい。
ほとんど無神経なほど、機嫌良く。
鼻歌だって、歌いかねないほどだった。
それが、微妙にカンに障ったらしい。美有希が、ちょっといらいらとしながら、賢介に言った。
「ないわよ……!
見て、判んない? 鈍感ね!」
美有希が、びしっと、わたしに向かって指をつきつけたのを見て、賢介が「ん~~?」と顔を近づける。