はだかの王子さま
 ち……近い!

 賢介は、かなり近眼だ。

 授業の時は、黒板を見るために眼鏡をかける彼は、わたしをちゃんと見るために、簡単に自分の顔を近づける。

 それは、別に、キスをするわけでも、何でもなく。

 必要なんで、近づいてるんだけど……。

 星羅とも、お父さんとも違うタイプの顔が、すごく近いと恥ずかしい。

 じーーっとわたしの顔を見ていた賢介は、ようやく驚いた声を出した。

「うぁ、真衣、泣いたあと、あるじゃん!」

「ようやく、気がついたの?
 鈍感男!」

 うぁ、きっつ!

 美有希の容赦のない攻撃に、賢介は、自分の人差し指同士を合わせてつんつんしてた。

「だ、だって~~」

「自分に良いコトがちょっとあったから、ヒトのコトは関係ないって?」

 そこまで美有希に言われて、賢介は、勢いこんで言った。

「なんでオレに、良いコトがあったって判るんだ!?
 でも、ヒトの事情は関係なくないし!
 真衣は元気が一番だよ!
 しかも、オレの良いコトは、真衣に直結してるんだぜ!」

「……え?」

 なによ、ソレ!

 賢介の口から、連発される自分の名前に首を傾げれば。

 彼は、胸を張って嬉しそうに言った。

「師匠が、真衣の誕生日、家に泊ってけ。だって!」

 なによ、ソレ!!!


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