はだかの王子さま
 賢介の言葉に、わたしは、声も出ないほど、驚き。

 それは、横で聞いていた美有希も、同じだったらしい。

「本当に、真衣の誕生日の日、家に泊るつもり!?
 しかも、そんなコト許す師匠って誰よ!」

 信じられない!

 と、叫ぶ美有希に、わたしは呆然と言った。

「賢介の師匠、お父~~さん」

「お父さん!? 真衣の!?」

「……うん」

 賢介は、わたしの幼なじみだ。

 ずっと、お父さんと二人暮らしだったわたしが、うんと小さいころ。

 身体が弱くて、保育園にも幼稚園にも通えずに、ずっと家で寝ていなくちゃいけない時があった。

 そんなわたしの唯一の話相手が、賢介だったんだ。

 やがて、体が丈夫になって、小学校に通えるようになっても、付き合いは続き。

 お父さんが、こんなゴールデンウィークの時や、いろんな事情で家を開けなくちゃいけない時に、良く賢介の家に、預けられていた。

 でも、それは小学校を卒業するまでのことだったのに。

 大きくなってからは、賢介のお母さんが、体調を崩したせいもあって。

 彼の家にお世話になることも、守野家の誰かが、ウチに泊りこむこともなかった。

 ただ、最近は。

 賢介が、フェアリーランドのポップコーン売りのアルバイトを始めて、少し経ち。

 調子の悪かったポップコーン製造機を、お父さんがあっと言う間に直したのを見て以来、ファンになった、とかで。

 ウチのお父さんを『師匠~~』とかって呼んで、懐いていたけれど……
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