はだかの王子さま
 本当は、心の中でだけで思うはずだった星羅への返事だったのに。

 思わずポロッと口から飛び出してたみたいだった。

 はっと気がつくと、星羅の目元涼しく、切れ長で、真剣に輝く瞳が、わたしの顔を覗き込んでいた。

「僕は、一生懸命咲いている花は、どんな花でも、好きだ。
 けれども、自分の大切な恋人を、そんな風には、表現しないよ?」

「……星羅」

「ヴェリネルラは、とてもキレイだよ。
 僕の故郷に咲く、世界で一番の花だと思ってる。
 確かに花屋に並ぶ花じゃないけど、それだけ、貴重で珍しいんだ。
 いつか、真衣と見に行きたいね」

 なんて、笑う星羅が、まぶしすぎて、わたしはそっと目を伏せた。

 星羅の故郷は、日本じゃない。

 しかも。

 とても遠い国だから。

 今度、帰る時は、花嫁と一緒じゃないと帰らない……なんて、言ってたことを思い出した。

 大好きな、大好きな、星羅。

 とびきりキレイな星羅。

 でも、わたし。

 星羅のお嫁さんなんて、務まるのかな?

 もうすぐ、十六才。

 ついこの間、高校生になったばかりで、なんにも出来ないし。

 だいたい、わたし。

「星羅と一緒に花を見に行けるほど……キレイじゃ……ないし」
 
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