はだかの王子さま
 星羅は一月は丸々寝てたから、大丈夫~~

 なんて、のんきに幾晩も徹夜してたけど。

 本当はわたしと会う時間を作るために、眠る時間を削ってたことも知っている。


 うん。


 やっばり、わたし。

 誕生日は、一人でいよう。

 星羅も、お父さんも、そして賢介も。

 ナニを考えているか、さっぱり判んないけど、わたしはやっぱり、好きなヒトとだけ、一緒に居たい。

 そう決めて、賢介を見上げた時だった。

 賢介も、わたしの瞳を覗き込むところだったらしい。

 丁度、二人、目が合った、と思った瞬間。

 とても、変なコトが起こった。

 隣には、美有希がいて、更に少し向こうには、クラスメートがワイワイと騒いでいるのにもかかわらず。

 一瞬、辺りの音が消えて、賢介の声だけが響いて聞こえたんだ。
 
『師匠と桜路さんがいないときは、オレが代わりになるからね?』

 ……なにこれ!

 見つめられた、賢介の瞳から目をそらすことも、椅子から立ち上がる事もできない。

 まるで、朝。

 星羅に椅子ごと抱きしめられたとき、みたいだ。

 ううん。

 それよりも、強い吸引力がある。


 ……怖い。

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