はだかの王子さま
そんな。
本気で泣きそうなわたしを、星羅はぎゅっと抱きしめたとき。
いつの間にか、わたし達の前に立ったお父さんが、声を出した。
玄関先に整列するように集まったモノに向かって、まるで、人間に話しかけるように。
「諸君らの、日々の労働に感謝している。
……けれども、君らは、契約者である俺以外。
人前では、悪戯に動くことの無い、真面目な種族だと思ったが?」
何も知らない娘を脅かしては、ダメだ、なんて。
こちらも真面目くさって父さんは、言った。
その光景は……とっても変だった。
だって、お父さん大人の……男のヒト、なのに。
世界中のありとあらゆるモノは生きている、って考えている女の子、みたい。
玄関の上がりかまちに乗ってるデッキブラシが、まるで小さい子どもであるかのように。
柄の八割ぐらい上辺りに視線を合わせるように、腰を落として話してる。
すると。
しゃかしゃか
ぐりりりんっ!
突然、デッキブラシがひとりでに、動き出したかと思うと。
玄関に飛び出して、優雅に円を描き『叫んだ』。