こおにの手紙
「できたぞ。問題はどうやって届けるかだ」
子おにはうで組みをして考えました。
「おらが運んでやろうか」
神社の赤土を掘りあげたのは、モグラです。
「ただし、あんさんの口にあるキバを一本くれたらの話だけどね」
おにのキバというのは、刃物のようにするどく、ダイヤモンドよりも固いのです。
「子供が生まれるから部屋を増やしているんさ。そのキバがありゃあ、ひょいひょい土を掘れる。部屋を作ったら、秘密の地下道を通って一日で手紙を届けてやるさ」
子おには少し考えました。
キバを抜くのは、とても痛そうだったからです。
「みえちゃんのためだもんね」
ヒマワリみたいなみえちゃんの笑顔が見たくて、子おにはするどい痛みをがまんして、右のキバをモグラにわたしました。
モグラは、けむりのように土の中へと消えていきました。
ところが、一週間が過ぎてもひげもじゃ神さまからの返事はありません。
それもそのはずです。
手紙は届いていなかったのです。