最弱暴走族と桜【完】SS更新中!
その六。(相汰Side.)
「もう、アレは化け物だよ」
「そーだよな…」
暗い夜道。尚と俺は肩を並べて歩いていた。
頬にある傷に軽く触るとチクッと痛みが走る。
血桜だと周りにバレたくないと言う願いにより“姐さん”と呼ぶ事になった。
姐さんの前だと敬語の尚も今は素に戻ってる。
「でも、俺さぁ」
「んー?」
「今、喧嘩したら勝てるか解らないけど“負ける気”はしないなー…。多分」
「多分かよ」
“華龍・血桜”と言えばこっちの奴等で知らない奴はいない。
俺も尚も“華龍”や“血桜”に憧れていた。手の届かないハズの存在が今は俺等の先生だ。
「桃李、知らなかったんだってよ。桜さんの事」
「自分のねぇちゃんのに?」
「あぁ、昨日知ったんだって」
自分のねぇちゃんが凄い存在ってどんな感じなんだろう。姐さんは自分が“華龍・血桜”を名乗る事を嫌がっていた。それはきっと、桃李の為。
桃李が今まで通り生活していける様に。“華龍・血桜”の弟にならない様に。
姐さんは怖いけど綺麗で優しくて。
そんな所に総長も姐さんの事を好きになったんだろうなー。って思った。あの総長が初めて見せた素は姐さんがいたからで、やる気を出したのも姐さんのおかげ。
「華龍の人達が羨ましい、な」
「おう」
華龍の総長が女だって知った時は吃驚したけど、姐さんなら誰も華龍の総長だと認める。絶対。
「大和もやる気を出したし」
「あの総長が悲鳴上げて…っ」
やべ…、思い出したら可笑しくなってきた。
怖かったけど、楽しかったのも事実で。これから少しの間アレが続くのかって思えば嫌になるけど楽しみでもあったりする。