最弱暴走族と桜【完】SS更新中!
教室に入るとクラスメイトの視線ががあたしに刺さる。
ぼそぼそとあちらこちらで聞こえるあたしの“噂”。
まあ、毎日の様に顔や腕、制服から見える至る所に怪我をして絆創膏や包帯を巻いていたら当たり前だと思う。
あたしの受験した中学は勉強さえ出来たら学費も全て免除の私立だった。勿論あたしは荒れてても、テストは何時も三位内には入っていたから教師は特に何も言わなかった。
面と向かって何も言わないだけ。教師も生徒もあたしが聞いて無いと思って影でボソボソ言ってる。
あたしは窓際に一番後ろの自分の席に着く。
昼間は学校。放課後は喧嘩。偶に華龍の溜まり場に行って顔を見せて、それから家であるマンションに帰る。
それが中学生のあたしの日常。
「でさぁ、塾帰りに見たんだけど怪しい店に…」
「マジで…っ?!」
「あ、私も見たよ。男子高校生と一緒にいたの!」
「ソレ、わたしも見た。あの制服、渋木(シブキ)高校だった」
「えーっ!それ、この辺りで一番の不良高じゃん」
クラスの派手目の女子のグループ。
あたしの方をチラチラと盗み見しながら小声で喋る。
「でもさぁ、渋木高ってカッコいい人多いよね」
「やっぱり、顔とか身体とか使ってさぁ…」
ガンッッ!!
教室に鈍い音が響き、クラスにいる全員が静まり返って音の源であるあたしを凝視する。
あたしは蹴って列からはみ出た机を一瞥して、さっきのグループを睨む。
「「ヒ…ッ!」」
『言いたい事があるならハッキリ言えよ。あたしが男目的で華龍に出入りしてるって言いたいんだろ?』
「…っち、違…」
『何が違うんだよ。それにあたしもお前らの事知ってるぜ?
ロリコンの変態オヤジ相手に毎晩何してるんだか』
「……っ!何で知って?!」
『あ、本当だったんだ』
鎌を掛けてみたのに当たり。それは驚いた。
――…なんて。
本当は、例の渋木高の奴らに聞いた事。
あたしと同じ制服の女の子が中年のオヤジと腕を組んで歩いてたって、笑いながら言ってた。
さっきのグループ以外のクラスメイトの視線があたしから離れてそのグループに刺さる。
軽蔑の目で見られるのは誰でも耐えられない。きっと、彼女らは明日からでもこのクラス、学校から消えるだろう。